中国の「国潮」ブームから学ぶ、自国ファンのススメ
中国の「国潮」ブームから学ぶ、自国ファンのススメ

中国の「国潮」ブームから学ぶ、自国ファンのススメ

ライター
公開日
Nov 10, 2021

中国広東省の深圳は「ハードウェアのシリコンバレー」と言われるほど多くのテック系企業がひしめいています。ドローンのDJIのようにグローバルに展開し日本でもよく知られたメーカーから100人規模のものまで様々あり、例えばマイクやイヤホンなど、Amazonで見つけて深圳のメーカーとは知らずに購入しているケースもあるかもしれません。

これらの中小メーカーはAmazonなどで海外向けに販売する際、中国企業であることをあまり積極的に表に出さないことがあります。公式サイトのドメインは.comを使い、ブランド名もサイトも英語、というパターンです。私自身も深圳の企業をサポートしていた時、「日本で深圳はクールなテック都市として認識されているのでアピールしては?」と提案したものの、却下されてしまったという経験があります。

中国の「国潮」ムーブメント

一方、近年の中国国内では「国潮」と呼ばれるムーブメントが起こっています。中国の検索サイト「百度」によれば「ファッションスタイルのデザインに中国的要素を取り入れたもので、例えば服、靴、嗜好品など」とあります。

化粧品の「花西子」などはその代表的なブランドの一つといえるでしょう。中国国内のみならず、そのままのデザインでグローバル展開もしかけています。日本でも中国の美しい女性インフルエンサーが「チャイボーグ」という流行語を生むほど注目され、彼女たちにあこがれる女性が急増したこともあって、「花西子」が日本市場に参入した際には大きな話題となりました。

具体的に製品を見てみましょう。例えばこの製品は華表(装飾が施された石柱)のように彫刻が施された口紅で、ケースも陶器の壺をイメージしているそうです。

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出所:花西子 https://florasis.com/collections/lips

また、こちらの製品は浮彫のレリーフ風に仕上げたメイクパレットで、ケースもオリエンタルな雰囲気にあふれています。

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ほんの数年前まで中国女性の中国製化粧品に対する評価は低く、海外メーカーの化粧品を求めるのが普通でした。いわゆる「爆買い」で日本の資生堂やSK2の化粧品が人気という話を耳にした方もいるかもしれません。私自身も中国から女性のお友だちが東京に遊びに来ると化粧品を買うお手伝いをするのが常でした。それらの日本メーカーは依然として人気ではありますが、最近では中国メーカーの化粧品に対する意識は若い世代を中心に大きく変わってきていると感じます。花西子の中国公式販売サイトを見てみても購入者の口コミはおおむね高評価で、多くの中国人女性の心を捉えていることがうかがえます。

海外版公式サイトではほかにも様々な製品を見ることができるので、ぜひその世界観を覗いてみてください。

花西子海外版公式サイト

広がる「国潮」ブーム

このような国潮の流れは、従来あまり積極的に「中国製」を前面に出してこなかったテック製品にも波及しています。

こちらは自撮り棒のようなコンパクトなものから本格的な業務用まで各種ジンバルを展開し、日本でも徐々に知名度が上がってきているZhiyunというブランドのカメラ用ジンバルです。

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出所:Zhiyun日本公式ページ https://zhiyun-tech.jp/

お気づきでしょうか。操作用モニターの裏面に漢字で大きく「智云」とあります。これはZhiyunの漢字表記です。公式ロゴはアルファベットなので、ここでは敢えて漢字をデザインとして取り入れていると思われます。これまで多くのテック企業が英語での発信を意識してきたのは「テック=先進」というイメージを意識してのことだと思います。そのため、デザインも洗練されたクールなものが好まれてきました。そんなテック製品にも漢字がデザインされるとは、「国潮」がクールであると認識されてきている証のように感じ、大きな衝撃を受けました。

本来「国潮」とは中華風の要素をデザインに取り入れるムーブメントでした。ところが、今ではさらに一歩進んで「中国発」というような広い意味で用いられているのを目にするようにもなりました。例えば日本でも人気のDJIやXiaomiも「国潮ブランド」と表現されることがあるようです。

「国潮」ブームの背景

この「国潮」ブーム、アメリカによる対中国への規制強化による反発から、一気に愛国心が高まったことも背景としてあるのでは、と感じています。中国では基本的に身内を大事にするので、共通の敵が出現すると結束を強める傾向があるのです。余談ですが、先般開催された東京オリンピックの卓球男女混合ダブルスで日本が金メダルを獲得した際には、私の親しい友人含めみな「日本は敵!」という雰囲気でした。普段は親しい私をみな「身内」扱いしてくれるので、初めての敵認定にとても戸惑ってしまったほどです。(もちろん、オリンピック終了後は通常通りの身内扱いに戻りましたが。)

また、新型コロナウイルスの防疫については徹底的な対策により中国は世界に先駆けて感染拡大を収束させました。ほんの数人の感染者が出ただけで大きなニュースになるので、日本ではあまり認識されていないかもしれませんが、実際のところは適宜防疫体制をアップグレードしながらもう1年以上ゼロコロナに近い状況が維持されています。そのため、経済も停滞することなく順調に回復していて、このこともまた中国の人々に大きな自信を与えているようです。

自国のファンになろう

愛国心は行き過ぎると他国を貶める差別に発展しかねず、手放しで推奨できるものではありません。また、いうまでもなく中国にもいろいろな人がいるので、「愛国」と一言でいってもそのスタンスは人それぞれです。ただ、総じて日本人よりも愛国との距離を取るのがうまいと感じています。

日本人はどうしても「100か0か」という発想になりがちで、日本という国に対しても「神の国」と「落ちこぼれ国」といったような両極端な評価に偏ってしまうことがまま見受けられます。一方中国では、「中国人は中国製品を信用しない」と誰もが言っていた時代から、昨今の国潮ブームまで、基本的な祖国愛は通底しているように感じます。この「力加減」は日本人も学ぶところがあるのではないでしょうか。

中国の人々のこのような愛国スタンス、いうなれば「自国ファン」として常に応援し、時には叱咤激励する姿勢はむしろグローバルスタンダードで、これも日本が少し特殊なのかもしれません。このような日本的こだわりから開放されるには、海外との関わりを深めてみるのも一つの方法です。実を言えば、私自身も以前は「日本は落ちこぼれのダメな国」と冷笑するタイプでした。それが中国と関わるようになり、外から日本を見る機会に恵まれ、今ではすっかり「日本ファン」の一人です。

この連載が目指しているのも、中国的視点を通して日本に対する新たな視点を得ていただくことです。読者のみなさんのそんなきっかけになることを願っています。

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