リサイクル先進国の欧州でも課題山積み!?~世界中で注目されるゴミのリサイクル
リサイクル先進国の欧州でも課題山積み!?~世界中で注目されるゴミのリサイクル

リサイクル先進国の欧州でも課題山積み!?~世界中で注目されるゴミのリサイクル

前回は、歴史的背景から焼却処分が前提の日本と、埋立処分が前提のヨーロッパの現状について述べた。

この記事では、その違いから生まれるリサイクル率の違いを追っていきたい。

リサイクル意識の違い

日本は早くから焼却処分が前提の廃棄物処理の社会システムを構築する一方で、

1990年代から取り組んだヨーロッパは、リサイクル前提で埋め立て量そのものを抑制する方向に進んだ。

リサイクル率を高めるには、いかにゴミを適切に分別できるかがカギになる。

集団意識が強く、ハイコンテキストな日本社会では、市民レベル(各家庭)の分別に力を置いた。

日本で最もリサイクル率が高い自治体の一つである鹿児島県大崎町では、リサイクル率80%を維持しており、12年連続1位を記録している。(2018年に一度北海道豊浦町に首位を奪われたが2019年に1位に返り咲いた。)

大崎町は人口規模も小さく、焼却処分施設の建設・維持コストを賄うのが難しいと判断。

町の担当者と町民が何度も話し合いを続けた結果、焼却処分しなくても済むようにリサイクル率を高める方向で合意した。

住民は27品目の分別を行っている。

しかし、多くの都市圏では、人口規模も大きく、住民の転入出も頻繁にある中で、地方のコミュニティのような一致団結を求めるのが難しい。

また、家庭以外にも事業者から排出されるゴミも多く、事業者へ細かい分別を求めるのが難しい状況もある。(小規模事業者のゴミは自治体が集めている例が多い)

日本のリサイクル率は平均20%程度である。

一方、多様性の高いヨーロッパ社会では、市民の意識もバラバラ、民度の差もある事から、個人の分別に頼るのは現実的ではない。

以下の記事にあるように、ヨーロッパでは早い段階から大規模なソーティングセンター(分別施設)を作り、民間事業者へ委託する国が多かった各自治体が小規模で集めるよりも、広域から集めたほうが効率性が高いと認められているからだ。

ヨーロッパではソーティングセンターでの選別が一番経済的に優れていると評価されています。 そして、ほぼすべてのソーティングセンターが民間の所有であり民間によって運営されています。 ソーティングセンターは循環型社会の心臓部と書きましたが、ヨーロッパのソーティングセンターは日本と比べるとかなりの広域から廃棄物を集めます。 ヨーロッパでは家庭系廃棄物分野に民間の廃棄物マネジメント会社がたくさん参入して、自治体の廃棄物処理を丸ごと受託しリサイクルしているというところが、かなりあります。 なぜ共同運営できるのかといえば、EUの公共調達指令で個別自治体が運営するより効率よくごみ処理の仕組みを運営できるのであれば、共同運営を許すとの欧州裁判所の判例があるためで、複数の自治体の共同運営によって、非常に広範囲からゴミを一か所の処理施設に集中的に集めることが可能なのです。 経済競争が成り立っていたからソーティング・センターが育ったということなんです。 EUにおけるリサイクル制度および資源効率性(RE)政策の検討状況に関わる最近の動向について その4

EU加盟国での「Municipal waste」のリサイクル率は平均47%。日本の20%と比べるとずっと高い。(数字は以下Eurostatの統計情報を参照)

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ただ、リサイクル率の計算方法は、国や地域により定義が異なるため、注意が必要だ。

一概に数字だけをみて比較する事は難しい。

しかし、ヨーロッパ基準に換算した場合でも日本のリサイクル率は22.7%。ヨーロッパの先進諸国の水準と比べると依然低い。(具体的な換算については以下の記事参照)

日本では、「直接資源化量」と「中間処理後リサイクル量」と「集団回収量」の合計をごみ排出量で除したものをリサイクル率と呼んでいます。 (中略) EU加盟国では、ごみの処理処分はR1~R13(RはRecoveryの略)とD1~D15(DはDisposalの略)に区分されているのですが(図3)、R2~R13に該当する中間処理が行われるごみの量をリサイクル量として計算します。ここで注目すべきは、中間処理後に資源化されるモノの量ではなく、中間処理前のごみの量をリサイクル量とする点です。EU加盟国では、どのようなごみであってもR2~R13に該当する中間処理が行われるのであれば、どんなに歩留まりが悪くても(残渣が多くても)、中間処理前のごみの全量がリサイクル量としてリサイクル率が計算されるのです。 なぜ日本のごみのリサイクル率はヨーロッパに比べて低いのか?(2020年8月号)ー資源環境・廃棄物研究センター

「Environment at a Glance 2018 OECD INDICATORS」のデータを元に、リサイクル率が高い順に国を並べ替えた表を作成した。(下表)

日本のリサイクル率は19.6%とOECD他国と比べても低い。

また、焼却処分が前提の日本では、lncineration with energy recovery(焼却処分+熱回収)(グレー)がダントツで多く(74.2%)、Landfill(焼却せず単なる埋立処分)がほぼゼロなのがわかる。

こちらのデータを元に著者にて作成。
2018年度のデータを使用しているのは、最新の2019年度では日本の記載がなかったため。

地方自治体が主体の日本と、広域・民間な欧州

ヨーロッパは家庭(個人)でのゴミの分別の限界を感じ、早くからソーティングセンターを民間に委託し、大規模に収集してゴミの分別を行ってきた

事業としてゴミの分別をする事で、品質の高い分別が実現し、日本よりも高いリサイクル率を達成している。

一方、日本のリサイクル率は中々向上していない。これまでのような家庭の分別に頼るのが難しい状況に来ている。

日本では10年以上もリサイクル率が伸び悩んでいます。日本でリサイクル率をさらに高めようとするのであれば、ごみの30~40%を占めるとされる有機性ごみを焼却処理せずにリサイクルすることが必要となります。現在焼却処理されているごみが、本当に焼却処理すべきごみなのか、他に資源化の方法はないのか、というように焼却処理あるいはごみ処理のあり方を考え直す時期なのかも知れません。 なぜ日本のごみのリサイクル率はヨーロッパに比べて低いのか?(2020年8月)ー国立環境研究所

では、日本においても、『ヨーロッパのように広域回収ができる民間のソーティングセンターを建設すればよいのではないか?』という疑問が湧くが、そう簡単ではない。

日本の一般廃棄物処理は、各地方自治体が責任を負っている。日本全国には1700を超える地方自治体が存在しており、自治体の多くは限られた予算の中で廃棄物処理施設を建設・運用している。

1700もの自治体がそれぞれ分散して投資をしており、規模の経済が働かない。

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高度経済成長期の早い時期に、各自治体が競って焼却施設を建設し、維持・管理をしてきた。

既に存在する焼却施設を手放し、解体して、自治体の枠を超えた横断的な廃棄物処理のグランドデザインを描くのは容易ではない

また、各自治体は、古くから地場の収集業者に収集を依頼することが多い。

収集業者の多くは中小・零細企業であり、彼らが簡単には広域回収に転換できるわけではない。

とはいえ、リサイクル率改善に向けて何も進んでいないわけではない。

直近だと先月6月、プラスチックごみの削減やリサイクル強化に向けた、いわゆる「プラスチック新法」(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)が6月4日の参院本会議で可決、成立した。

同法案により、現行法の下では難しかった市町村と民間の事業者が協働してプラスチック回収が進むとされている。

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プラスチック新法について

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プラスチック新法の一括回収。自治体によっては負担増になることから慎重論も多いことは明記しておきたい。

一括で回収しても、現状の施設のままでは分別の処理が追いつかずリサイクル率の増加には繋がらない場合もある。

分別の処理が追いつかなければ、焼却の量が増えるだけだ。容量が限界にきている自治体にとっては焼却することもままならない。

さらに、単純に燃やすにしても注意が必要だ。プラスチックはカロリーが高いため、必要以上に生ゴミに混ぜると温度が高く燃えすぎてしまう。配分量の管理も課題となる。

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プラスチックよりも深刻な生ゴミ

さて、上記はプラスチックのリサイクル率改善の取り組みだ。

ゴミのリサイクルというと、プラスチックのリサイクル率ばかりが取り上げられるが、実は”生ごみ”の方が重要性は高い。

プラスチックは比較的分別しやすく、ごみに占める割合も11%と多くはない。

一方、生ごみ(厨芥類)は31.2%と多いにも関わらず、リサイクル自体が難しい。

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実際の家庭用生ごみのリサイクル率は5%程度と非常に低い。

これまで焼却処分を前提としてきた日本では、生ゴミは燃やすものという意識が強く、リサイクルが中々進まない。

韓国を始めとする他の国々では、生ごみ対策に力を入れており、それがリサイクル率の向上にもつながっています。 現在、日本では家庭からの生ごみの多くが焼却されています。また、多くの自治体で家庭用堆肥化器具等の購入補助がされていますが、家庭で生ごみを堆肥化しているのはごく一部に留まります。 堆肥化、あるいはメタン発酵などの方法で生ごみをリサイクルする場合には、生ごみの分別が必要であり、手間はかかりますが、それだけでもリサイクル率は高くなります。 知ってほしい、リサイクルとごみのこと

日本でも事例がないわけではない。

例えば、上述した鹿児島県大崎町の事例では、生ごみを高品質な堆肥に変えている。

生ごみは腐敗が始まると臭いを発する。逆にいえば、腐敗が始まる前であれば臭いはしない。

その段階で微生物による菌の分解が進めば、良質な肥料(コンポスト)になる。

大崎町では腐敗が始まる前に生ゴミを回収している。

また、町内での収集に加え、家庭用の電動生ごみ処理機を購入する際の補助金を交付している。家庭の中での処理も奨励している。

日本政府も家庭での堆肥化を進めており、全国各地で同様の補助制度を設けている。

しかし、大崎町の事例を、住民が多く市民の意識の差も大きい大都市で定着させるのは簡単ではない。

一般家庭に加え、飲食店などの事業者にも協力してもらい、腐敗が始まる前に所定の場所へ運んだり、各家庭に電動生ゴミ処理機を導入する策は簡単には広まらない。

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生ゴミのリサイクル率95%を誇る韓国の取り組み

この点、韓国は世界でも先進的な取り組みをしており、生ゴミのリサイクル率95%以上を達成している

韓国では一般ごみと生ゴミ(食品廃棄物)を区分する法律があり、分別した生ゴミはお金を払い回収・リサイクルされている。回収した生ゴミは、バイオ燃料や家畜飼料などに利用される。

韓国でも1997年以前は生ゴミは埋め立て処分されていた。1997年に生ゴミを分別する法律が制定、2013年にはPay as you throw(お金を払って捨てる)システムが導入された。結果、ここ数年、韓国の生ゴミ(食品廃棄物)のリサイクル率は劇的に向上。現在は95%以上を誇る。

日本のように家庭での分別・堆肥化を促すのではなく、料金を徴収し大規模な施設でリサイクルを行っている。(詳細は以下の動画

しかし、その韓国でさえも大きな課題がある。多くのリサイクル施設では収益化できておらず、リサイクルした製品は無償で配っている状況だ。リサイクルした家畜飼料の2-3割は使用されていない。

リサイクル率が高いからといって、リサイクルした製品が必ずしも活用されているとは限らない一例である。

日本より遥かに進む韓国。行政・市民が一体となり、食品廃棄物の分別・回収、そして再利用化を実現した。

その韓国でさえも、リサイクル後の製品の活用に課題を抱えている。

欧州も抱えるプラスチックごみの輸出問題

日本と比較すれば高いリサイクル率を誇るヨーロッパ先進諸国。リサイクル率が高くて素晴らしいように見えるが、ヨーロッパ先進諸国においても国際的に大きな問題を抱えている。

例えば、プラスチックごみの輸出問題だ。

日本でも数年前に「世界各国から大量のプラスチックごみを輸入していた中国が輸入を禁止した」というニュースが話題になった。

日本は世界第3位の廃プラスチック輸出大国であり、2017年は143万トンの廃プラスチックを輸出した。2017年までは、日本の廃プラスチックの主な輸出先は中国であり、年間輸出量の半分を輸出していた。中国が2017年末から主に生活由来の廃プラスチックの輸入を禁止すると、日本の廃プラスチックは東南アジアや台湾へ輸出されるようになったが、これらの国・地域も次々に輸入規制を導入した。このため、日本国内で処理される廃プラスチック量が増加している。 行き場を失う日本の廃プラスチック(2019年1月)ーJETRO

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同様の問題はヨーロッパの先進国でも起きている。

廃プラスチックの輸出1位はドイツ、2位が日本。以降、3位米国、4位フランス、5位オランダと続く。

上記、JETROの記事より:

輸出一位のドイツでは、中国での輸入が禁止されると、マレーシア向けの輸出が急増した。

ドイツは隣国のオランダに対しても輸出しており、ドイツの廃プラスチック輸出では、1位のマレーシアに続く2位がオランダである。(マレーシアが17%、オランダが15%)

ドイツから多くの廃プラスチックを受け入れているオランダも、ドイツ、ベルギーに次ぐEU3位の輸出国である。

オランダは廃プラスチックの輸出が世界5位にも関わらず、輸入は世界3位である。なぜか?

英国環境庁(EA)の調査では、オランダが廃プラスチックのロンダリングに使われているとの指摘をする。

また、今年5月には、ヨーロッパ諸国からトルコへの不法廃棄が相次いでいるという調査レポートが発表された。

グリーンピースの調査では、英国とドイツからのビニール袋とパッケージがトルコ南部全体に投棄され、燃やされていることが判明したと毎日約241台のトラックのプラスチック廃棄物がヨーロッパ中からトルコに不法廃棄されている

そのトルコにおいても、今年5月にプラスチックごみの輸入を禁止すると発表した。

自国で処理できないほどの量を排出する先進諸国。各国が相次いで廃プラスチックの受け入れを拒否する中、違法な投棄が続いている。

国際刑事警察機構(インターポール)は、『中国での廃プラスチックの輸入禁止措置後に犯罪組織が西側諸国の廃プラをアジアの違法なリサイクル施設に密輸し、不正な利益を得ている』と警告を出している。

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インターポールのレポート全部はこちら。 Emerging criminal trends in the global plastic waste market since January 2018

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世界中での不法な廃プラスチックの取引については、様々な動画でも紹介されている。

技術だけでは解決できない廃棄物処理問題

セルビアの廃棄物問題をきっかけに、関心をもった世界の廃棄物処理問題。

数ある社会問題の中でも、特に廃棄物処理問題は解決が難しい。

多様な人々、事業者が共存する都市社会の中で、環境意識を根付かせ、分別を徹底することは用意ではない。仮に市民の環境意識を劇的に変えたとしても行政など社会の仕組みに受け皿がなければ分別しても無用に終わってしまう。

行政と市民、民間業者が連携し、大規模回収、分別の仕組みを築いたとしても、廃棄物を付加価値ある製品に転換するための技術が必要となる。仮に、画期的な技術発明により、廃棄物を価値ある製品に生まれ変わらせることができたとしても、その製造にかかるコストが高ければ普及しない。

リサイクル品の製造コストを抑えることが出来たとしても、製品自体の需要がなく、活用されない例もある。

技術や市民の環境意識の変化に加え、既存の地方行政・民間企業・市民の社会システムにも大きく左右される。さらに、国境を超えた国際社会でのルールづくり、政策協調も求められる、難易度の高い社会課題であることが見て取れる。

本記事が、皆様のごみ処理問題への関心を持つきっかけになれたら、嬉しく思う。

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Deeper ライターズ

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