オランダのサーキュラーエコノミーは"都市の代謝のデザイン"
オランダのサーキュラーエコノミーは"都市の代謝のデザイン"

オランダのサーキュラーエコノミーは"都市の代謝のデザイン"

2020年に旅した、オランダ アムステルダムへのサーキュラーエコノミー視察旅行の模様をレポート

コロナ禍で海外への渡航が難しくなって久しい。

しかしながら世界はコロナ禍においてもSDGsやパリ協定のゴールに向かって、世界の国々は金融機関や企業、NGOと連携ししのぎを削っている。

また、日本においても2020年10月26日に菅首相が所信表明演説で、国内の温暖化ガスの排出を2050年までに実質ゼロとする「2050年カーボンニュートラル宣言」を表明したことは記憶に新しい。

私はコロナ禍がヨーロッパに飛び火する直前の2020年2月にオランダのアムステルダムへ、サーキュラーエコノミー視察のため1週間滞在した。

この記事の元となるのは、帰国後に個人のFacebookにて投稿したものだが、現在の日本においてまだまだその内容は色あせていないと思い、加筆修正のうえ掲載する。

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そもそもサーキュラーエコノミーとは?

まず、従来の経済活動はリニアエコノミーと言われる。資源の調達、製造、利用、廃棄が直線的に行われる経済である。日本ではプラスチックの再利用が盛んであるが、そのようなモデルはリニアエコノミーの延長にあるリユースエコノミーと呼ばれる。

サーキュラーエコノミーは、それらとは一線を画した考えで、プロダクトの設計当初より、資源の回収・リユース・リサイクルのプロセスを織り込む。そうすることで、廃棄物を出さずに可能な限り資源を循環させるモデルである。

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リニアエコノミー、リユースエコノミー、サーキュラーエコノミーのそれぞれの仕組みを表した概念図。 引用元:Goverment of Netherland

そのような循環を実現するために、サーキュラーエコノミーでは3つの原則に基づいている。

  • 廃棄物と汚染を生み出さない設計をする
  • 製品や材料を使用し続ける
  • 自然のシステムを再生する

これらの原則を具体的にモデル化したものが、バタフライダイアグラムと呼ばれる。

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バタフライダイアグラム 引用元:Ellen MacArthur Foundation.

このモデルのポイントは、いくつもの循環が生物的サイクル(左)と技術的サイクル(右)に分かれて行われる点である。

最も小さい円は、当初のプロダクトの価値を保ったまま、シェア・リユースされることを意味している。逆に最も大きな円は、リユースできなくなった状態のプロダクトを再資源化し、新しいプロダクトを生み出すことを意味する。それらが生物的なサイクルと、技術的なサイクルで行われるのである。

そのようにして、出来る限り資源をサーキュラーエコノミー内で循環させることで、資源開発に伴う環境負荷を減らし、廃棄による汚染を防ぐことを目指している。

サーキュラーエコノミー視察へのきっかけ

アムステルダムへのサーキュラーエコノミー視察のきっかけは、SDGsに関心を持ち始めた2019年の終わりごろ、オランダ在住で知人の吉田さんが開催した「アムステルダムから学ぶ循環型経済都市で今起こっていること」というセミナーだ。

このセミナーでは、SDGsというよりもパリ協定のゴールに向けてオランダ、特にアムステルダムが社会のサーキュラーエコノミー化に積極的に取り組んでいることが紹介された。さながら街自体が実験場のように、金融、建築、ファッション、フード、などなどあらゆる分野でサーキュラーエコノミーな取り組みが進んでいることがわかった。これはぜひとも現地に行って自分の目で見て体験したいと思い、オランダへのサーキュラーエコノミー視察を思い立った。

サーキュラーエコノミー視察を振り返って

1週間アムステルダムに滞在し、1日はロッテルダムにも足を延ばして感じたのは、オランダのサーキュラーエコノミーは"都市の代謝のデザイン"であるということ。

ちなみに、2017年に上海へそのデジタル世界を体験したくて視察トリップした際に感じたのは、デジタルがリアルな世界を包含して実現する"体験のデザイン"。中国は"都市の体験のデザイン"であるなら、オランダは"都市の代謝のデザイン"と言えるだろう。

衣食住をはじめ、これまで市民生活や企業活動において、排出されていた廃棄物や価値がないとみなされていたものにスポットライトを当て、それらがReduce, Reuse, Repair, Re-manufacture, Recycleの5つのRのActionで新たな価値を創造している。

今回、1週間の滞在で、さまざまな企業の訪問、Founderへのインタビュー、施設の見学、Fashion & FoodのShopに行ったが、どこでも感じるのはサーキュラーエコノミーが「儲かる」ということ。昨今の環境問題を踏まえて環境に良いということや、パリ協定などによる時代の要請・シフトというのも理由があるが、なにより「サーキュラーエコノミーな取り組みが儲かるから」というのを感じた。

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NDSM(元巨大造船所をリノベしたシェアオフィス)の一角にあるレストラン。もとは倉庫だがオシャレで人気。

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レストランのエントランス。異世界に迷い込んだような通路を抜けてカーテンをくぐると先ほどのホールに。演出が憎い。

日本では、どうしても「サーキュラーエコノミー」や「サステナブル」というものが、Social Goodであり、ハイコンテクストな文脈で語られることが多い。しかし、オランダのそれらは第一に「スケーラブルでありレプリカブルであり儲かる!」ということが感じられた。ローコンテクストで分かりやすく、サステナブルでありながら「うまい!」「かっこいい!」「リーズナブル・お得!」という動機づけが設計されている。

今回インタビューした、Excess Material Exchange(企業から出る廃棄物のリユース・リサイクルマーケットプレイス https://excessmaterialsexchange.com/ )のMaaykeさん、フローティングハウスなどの数々のプロジェクトを展開するSpace & Matter http://www.spaceandmatter.nl/ のMarthijnさんにインタビューして感じたのは、これまで消費一辺倒だった都市を生産の場へアップデートしようとしていること。

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左がExcess Materiarl ExchangeのFounderであるMaaykeさん。真ん中は一緒にアムステルダム視察した大畑さん。右が筆者。

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右がSpace & MatterのFounding PartnerであるMarthijnさん。一番左がアムス視察のきっかけをくれたイベントのプレゼンターであり、アムスを案内いただいた吉田さん。

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Space & Matterが手掛ける、フローティングハウスのモデル。

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Space & Matterのオフィスの目の前に実物のフローティングハウスが。実際に入居者がおり、生活が営まれている。

これまでの時代では、たとえば果物であれば、大規模農園にて大量生産し、都市に大量輸送し、都市にて大量消費、大量廃棄をする線形・リニアなモデルだった。しかしこれからは、都市にて生産し、消費し、その廃棄物をReuse~Recycleの段階を経ながら都市の中で循環・代謝させていくサーキュラーなモデルへ都市をシフトさせようと様々なスタートアップが生まれている。オランダでは、そのようなスタートアップへの投資が活発であり、今後はますます、PRI(PRI: Principles for Responsible Investment)原則のもと、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)いわゆるESGに適った投資が加速するであろう。

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ビーガンバーガーを提供するVegan Junk Food Bar。老若男女問わず店内は賑わっていた。オランダに5店舗と、バルセロナにも1店舗展開。

このようなことが可能になってきているのは、当然ながらテクノロジーの進歩があるからだ。

Excess Material Exchangeであれば、メーカーや飲食店、スーパーから出るオレンジピールに対して、無農薬かどうか、品種、生産地などなどの情報を細かくタグ付けし、これまで廃棄されていたオレンジピールに情報化により価値をつける。その後、オレンジピールは農業用飼料になったり、微生物で発酵させて皮にし靴にするアパレルスタートアップに卸したり。流通はブロックチェーンで管理されトレース出きるようにされている。

これはまさにITのパワーによりエントロピーの増大を抑え、品質を担保し価値の流通を可能にしていると考えられる。

これまでは安定した品質のオレンジピールを提供しようとした場合、大規模農園にて画一的なオレンジの栽培を行うことで品質を一定にし、エントロピーを抑えてきた。要は生産段階でしか品質を担保することができなかった。

しかしながら、Excess Material Exchangeは、生産段階ではなく流通段階で適切な情報を付与し、ブロックチェーンによりセキュアに管理することで、品質を担保することができる。要は、生産の場ではなく、流通の場を押さえることで品質を担保することができる。このことから、生産の場を大規模農園などに限定する必要がなく、あらゆるところから生み出されるオレンジピールにそれぞれに適した価値を付与することができる。そうすることでこれまで廃棄物だったものが商品になり、フードマイルの問題も低減できる。

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アムステルダム市内の公園の一角にあるレストラン De Kas。取り壊されるはずだった植物園の温室をリノベしてレストランへ。De Kasは”グリーンハウス”という意味。

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De Kasに併設されている温室。De Kasではシェフたちが、なにを植えて育てるべきかを考え、そのときどきによって野菜の育ち具合を見ながらメニューを作り上げる。80%の食材は自家農園で栽培しているとのこと。

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De Kasはアムステルダムで人気のレストランで、予約が困難とのこと。

このようにオランダのサーキュラーエコノミーはデジタルテクノロジーと表裏一体であり、都市の代謝をデザインしなおしていると考えられる。

そして、デジタルテクノロジーと融合することでスケーラブルでレプリカブルとなり、オランダだけでなく世界中に進出しようとしている。

だから、彼らの話を聞いているとSocial Goodだからというよりも、「そこにゴールドが埋まってるから掘るんだよ」というように聞こえてくる。

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鉄道脇の遊休地を活用したコワーキングスペース Tuin Van Bret。オフィスは貨物コンテナを活用している。手前はブドウ畑。ブドウ栽培の出資者を募り、ワインを作って還元しているのだとか。ピザ窯もあり、夏はバケーションで大賑わいらしい。

人類の歴史は資源争奪の歴史でもある。人類最初の文明から産業革命までは木材の奪い合いであった。そして、18世紀半ばから19世紀にかけては、木材から石炭へエネルギーがシフトし産業革命が起こった。そのようにして、オリエント~中国~スペイン・ポルトガル~オランダ~イギリスへと世界の覇権が移っていった。産業革命後は石油・天然ガスによるエネルギー革命が起き、ドイツ・アメリカが覇権を握った。

そして今、新たなリソース・エネルギー革命の覇権を握るためにヨーロッパはパリ協定をリードし、オランダはそのなかでもイニシアチブを握ろうと2050年 サーキュラーエコノミー化100%を目標に邁進している。

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ロッテルダムにある、サーキュラーエコノミーの実現を目指すスタートアップが集まるインキュベーションオフィス Blue City。

オランダは小さい国である。夏は短いし、冬は天気が荒れがちで、晴れ間が見えたかと思えばすぐに天気が崩れ雨が降る。そんなオランダだからこそ、ひと時の夏、つかの間の晴れ間を謳歌するかのごとく、人びとはチャンスと思えばすぐに飛びつき、チャレンジし、実験し自分の仮説が正しいか証明したくなるんだと思う。

リソースも時間も限られてるんだから、無駄なことはしてられない、楽しまないと意味がない、とでもいうように。

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巨大な元造船所をリノベしたコワーキングオフィス NDSM。

サーキュラーエコノミー化への取り組みに向けて

オランダでのサーキュラーエコノミー化の取り組みの様相を感じていただけただろうか。日本では、世界の潮流に乗り遅れまいと半ば焦りや悲壮感をもって取り組んでいると感じる。しかしオランダでは、チャレンジングではあるが素晴らしい世界が待っていることを期待し、ワクワクしながらサーキュラーエコノミー化に取り組んでいるように思える。

コロナ禍を乗り越え、海外に渡航できるようになったときには、ぜひオランダに足を運び、オランダ流のサーキュラーエコノミーを体感してみてはいかがだろうか。

今回の視察ツアーで触れたサーキュラーエコノミー

1.Hotel De Hallen(元トラムの整備工場をリノベ)

2.Dopper(Cradle to Cradle認証を受けたプラスチックマイボトル。飲み口はワイングラスがわりにも)

3.Tony's Chocolate(奴隷労働されていないカカオをブロックチェーンで管理するチョコレートブランド)

4.Vegan Junk Food Bar(ヴィーガンのためのジャンキーなバーガーショップ)

5.CIRCL(ABN AMRO銀行が建てた、解体後の再利用を前提としたサーキュラーデザインな建築)

6.Instock(廃棄食材で作るレストラン)

7.Fashion For Good(ファッション業界の負の歴史の展示や、サーキュラーシフトへの取り組みを展示)

8.Men Impossible(ヴィーガン油そば。ヴィーガンでもうまい!儲かる!)

9.自転車(アムスの街中は自転車が市民の足。CO2ゼロエミッションですね。)

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10.UNBEGUN(市場の幌を再利用したノートPCバッグなどを展開)

11.Plastic Whale(アムスの運河のゴミ拾いボートツアー)

12.Tesla Taxi(空港ではEVタクシーが優遇されるのでTesla taxiをよく目にする)

13.Markthal(マンションと市場が合体したサステナブル設計な建物)

14.Excess Material Exchange(企業から出る廃棄物のリユース・リサイクルマーケットプレイス)

15.De school(廃校をコワーキング・レストラン・クラブにリノベ)

16.Blue City(元市営プールをサステナブル系スタートアップのシェアオフィスにリノベ)

17.Aloha(Blue Cityに併設のカフェ。食材は50km圏内のものにフードマイルを抑える)

18.NDSM(元巨大造船所をシェアオフィスなどにリノベ)

19.Faralda Crane Hotel(巨大なクレーンをホテルに)

20.Pllek(NSDMの倉庫をリノベしたセンシュアスなレストラン)

22.Schoonship(Space&Matterが手掛けるオフグリッドなプラットフォームが取り入れられた水上ハウス)

21.DeCeuvel(汚染された元船修理場をリノベしたシェアオフィス。こちらもSpace&Matterが手掛ける)

23.Tuin Van Bret(都市と駅の狭間に生まれたシェアオフィス・レストラン・ワイナリー複合体)

24.DIY Mashroom Farm Kit(コーヒーかすをベースに自分で育てるマッシュルームキット)

25.De Kas(80%自家農園栽培の野菜で提供するレストラン)

26.トラム(街中に巡る。中心部はクルマ進入禁止に)

27.英語(オランダは世界一非母国語としての英語が普及しているらしい。スケーラブルでレプリカブルだからだ。)

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