IKEAのカタログブックをサステナに!サステナシフト事例 ~SX最先端教科書「SiD」日本上陸記念・開発者Tom Bosschaert氏インタビュー(3/3)
IKEAのカタログブックをサステナに!サステナシフト事例 ~SX最先端教科書「SiD」日本上陸記念・開発者Tom Bosschaert氏インタビュー(3/3)

IKEAのカタログブックをサステナに!サステナシフト事例 ~SX最先端教科書「SiD」日本上陸記念・開発者Tom Bosschaert氏インタビュー(3/3)

オランダから世界のサステイナビリティを牽引するTom Bosschaert氏インタビュー、最終回となる第三弾をお届けします。

今回は同氏のビジネスにスポットを当て、同氏の実践やビジネスについてお伝えします。

第一回・第二回はこちら。

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Tom Bosschaert氏

19歳でサステイナビリティとビジネスに特化したデザインコンサルティング会社Except Integrated Sustainabilityを創業、間もなく同社コンサルティングの柱である理論と実践のフレームワーク「SiD」を開発し、無料公開。

2014年にはオランダの全国紙Trouwで「最も影響力のあるサステイナビリティ・プロフェッショナル」の1人に選出され、2017年には150以上のサステナ界隈のスタートアップが集うコミュニティ・コワーキング「UCo」をオープン。

現在までに20カ国以上でプロジェクトを手掛けるなど、国内外で持続可能性をリードしている。

ウルセム:以前、トムさんにとって「サステナイビリティ」とは、「この地球上で人間みんなが、幸せで充実した生活を送り、長期的な未来を築き、繁栄していくこと」だと伺いました。そのためには人間をとりまくすべての生命を尊重する必要があるとも。で、実際にどのようにトムさんがサステイナビリティを実現しているのか伺いたいのですが、まずは今まで取り組んだ事例の中で面白いものをいくつか紹介していただけますか。

トム:一番みなさんがご存じそうな会社のお話をすると、世界中のIKEAのカタログブックをサステイナブルにする改革をしました。ここで「再生紙を使おう」というような単純な手段がサステナ的に十分でないことは、今までお話したことからお分かりいただけたかと思います。

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70年を経て、2021年度版をもって発行を終了したIKEAカタログ(IKEA公式サイトより)

私たちはSiDのフレームワークを利用して、サプライチェーンを全て洗い出し、どこに最も効果の大きなサステナ的介入の余地があるか?と検討しました。その結果、サプライチェーン全体を改革するために、全世界でカタログを印刷している印刷所すべてに、利用しているエネルギー、カタログの材料から、従業員の待遇まで全て含めた自己評価をしてもらい、SXのサポートをする、もしくはもっとサステナな印刷所に切り替えるという方法が導き出されました。全世界で2億冊以上印刷していたカタログですから、そのインパクトは莫大なものになりました。

もちろん、「そもそもカタログ本自体刷らないのが一番環境負荷が低いのでは」という疑問は真っ先に持ちました。しかし依頼を受けた当時は、スタッフも買い物客もまだまだあの紙のカタログをすごく利用していて、いきなり廃止するのは利便性や満足度と言う意味においてサステナでないと考えました。結果的に昨年IKEAは、70年続いた紙のカタログの発行に終止符を打ちましたが、私たちが一緒に取り組んだ改革は必要なステップだったと思うし、彼らとはその後デジタル化の流れでまた一緒に改革を進めています。

ウルセム:なるほど。この記事を読んでくださっている方の中に、そうやってできたサステナなカタログを手に取った方もいらっしゃるでしょうね。オランダ国内の事例はありますか。

トム:オランダのビール会社、ハイネケンですかね。彼らは2031年までに生産フローのエネルギーや資源すべてを含め100%サーキュラー(循環型)にするために、非常に熱心に取り組んでいます。こちらもやはりSiDフレームワークを利用し、3日間私たちと同社のSX責任者、専門家などみんなが会議室に缶詰めになって実現までのロードマップを描き出しました。廃棄物や水の循環にも取り組み、生物多様性など自然環境だけでなく、人と人のつながりや健康、幸福度なども高めていくプログラムです。それもサステイナビリティの一部なので。

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オランダの国民的ビール(公式サイトより)

ウルセム:なるほど。グローバルな大企業の事例が多いようですが、逆にすごくローカルな取り組みなどもありますか?

トム:アメリカのコネチカットにある、「Miya’s」という寿司店です。ヨシコさんという日本人の栄養士をお母さんに、中国系の科学者をお父さんに持つバンさんというシェフが、私たちに「世界一サステイナブルなレストランにしたい」という相談をしてくれました。あなたならどんなお店にしますか?

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Miya'sシェフ バン・ライ氏(Wikipediaより)

ウルセム:え、えーと、廃屋利用?で、えーと、ベジタリアン寿司?で、残り物はフードバンクに寄付?

トム:たしかに野菜寿司も多く提供しています。が、私たちはやはりここでも「環境にかける負担をなるべく少なく」というネガティブな発想から一歩先に進んでSiDで色々描き出してみた結果、おいしくて、環境にもよくて、おさいふにもやさしい、そして豊富にある素材を使うという方法を見つけ出しました。サステイナブルな食材の可能性を洗い出し、地元の漁師さんにフィールドワークなどを行って「みんなが食べてくれた方がありがたい魚なんかいる?」と聞いた結果、みんな口をそろえて侵入種(外来種の生物・植物のうち、自力で繁殖するようになり元来あった生態系に悪影響を与える種のこと)の話をしたのです。

結果Miya’sは、地元で侵入種として駆除に有害な農薬や税金が大量に投入されていた(しかし健康にはいい)イタドリ、イラクサ、オオバコなどを利用したおいしいみそ汁や、イノシシ、ミノカサゴ、キャベツクラゲなどを使った寿司や料理のメニューを開発して大評判となり、「世界初のサステイナブルな寿司店」の認定を受けました。

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磯ガニを使った同店人気メニュー(Wikipediaより)

ウルセム:なるほど。環境にいいことをしている充実感とともにお寿司をたくさん食べられるなんて、ちょっと行ってみたいです。 その、事例の中でも必ず出てくるコアフレームワークのSiDですが、クイックガイドの日本語版も含め全て無料で公開されています。着想から完全版の完成まで20年かけて完成させたものを、なぜ無料で公開したのですか?

トム:私の目的は、サステイナブルな未来を実現することです。そしてそれは、みんなで取り組んでいかないと到底実現できません。そのための知識を独占していては意味がないのです。志を持つ人は誰でも、SiDのフレームワークをそのミッションに役立ててほしい。お金のない学生にも、裕福なビジネスマンにも、同じように世界を変えるための洞察力を持ってもらいたいのです。 実際、オンラインでSiDを読んでくれた、サステイナビリティに関心の高い学生から、とてもためになったという声がたくさん寄せられています。それこそが私にとって最も大きな報酬です。

ウルセム:全てはサステイナビリティへの熱意なのですね。トムさんの率いる組織はさぞサステイナブルなのだろうと思い興味があるのですが、Exceptはひとことで言ってどんな会社ですか?

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本社事務所は元鉄道車庫をリノベしたコワーキング「UCo」。サステナ関連の25の組織が集う

トム:ユニークで熱心な人が多く、とにかく専門分野や国籍、バックグラウンドなど多様性に富んでいます。一時は70人超のスタッフがいたのですが、組織が大きくなったことでフレキシビリティやフットワークなど色々なものが損なわれたので縮小しました。現在は16人で、この方がずっと自分にあっています。

過去も現在も、私のチームに参加してくれたメンバーからは本当に多くのことを学びました。彼らは私の大きな誇であり、喜びです。また、比較的小さな会社でありながら、大きな影響力を持つ大規模なプロジェクトを行うことができたことも誇りに思っています。

オフィスはユトレヒト市内にある、国鉄から買い取った元車庫の建物をリノベーションしたコワーキングスペースにかまえています。25の企業・組織の約180人が、サステイナブルな世界を目指して日々ここで仕事しています。

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健康とQOL向上のため、UCoの内部は緑があふれる。インテリアは全てリサイクル品

ウルセム:日本など、海外に進出する予定はありますか。

トム:私たちは常にグローバルに活動してきました。現時点で6大陸20カ国以上でプロジェクトが動いていますし、先述のOrchid CityやSiDのご紹介を含め日本にもいくつもご縁を頂いています。他の国でもし必要になれば現地に「支社」を作るかもしれませんが、柔軟で、スピーディで、イノベーティブであるために、その支社も小規模に抑えるでしょう。私たちは、いわゆる「クッキーを型で抜くような」仕事はしません。ケースごとに高度にカスタマイズし、専門化し、関係者のみんなにとって一番いい進め方と結果を創っていきます。このプロセスだけは「マニュアル化」することはできませんし、そういう意味ではやはり小さな組織で必ずコアメンバーがクライアントとご一緒する今のやり方が最良だと私は思います。

ウルセム:日本でもサステイナビリティを前進させてくれるのを楽しみにしています。今日はありがとうございました。

サステナ先進国から世界のSXを牽引するTom Bosschaert氏のインタビュー、3回にわたってお読みいただきありがとうございました。

「最も影響力のあるサステイナビリティ・プロフェッショナルのひとり」という印象にかなり緊張してお会いしましたが、実物は想像以上に人当たりがよく、よく冗談を言い、びっくりするほど誰にでも分け隔てなく気づかいをしてくれ、その場にいる人に1人のもれもなく温かい言葉をかけてくれる人でした。

くり返しになりますが同氏のサステナの定義は、「人がみな長期的に幸せに繫栄すること」、そしてそれを実現するために同氏が開発したSiD理論は大きくシステム理論に根差しています。

そう考えると彼は世界と未来のサステイナビリティを、今ここで自分と向き合う人をハッピーな気分にすることから始めているのかもしれない…などと考えながら、後ろ髪を引かれる思いでインタビューにお邪魔した「UCo」を後にしました。

https://landing.neuromagic.com/sid?utm_campaign=SX&utm_source=PR_09

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執筆者

Deeper ライターズ

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