サステイナビリティの若きリーダーはいかにして作られ、地球の未来をどう見ているのか ~SX最先端教科書「SiD」日本上陸記念・開発者Tom Bosschaert氏インタビュー(2/3)
サステイナビリティの若きリーダーはいかにして作られ、地球の未来をどう見ているのか ~SX最先端教科書「SiD」日本上陸記念・開発者Tom Bosschaert氏インタビュー(2/3)

サステイナビリティの若きリーダーはいかにして作られ、地球の未来をどう見ているのか ~SX最先端教科書「SiD」日本上陸記念・開発者Tom Bosschaert氏インタビュー(2/3)

オランダから世界のサステイナビリティを牽引するTom Bosschaert氏インタビュー、本日は第二弾をお届けします。

前回はサステイナビリティの本質、SX(サステナシフト)時代のビジネスマンが身に着けるべきマインドセット、日本のSXの入り口などについて語っていただきました。

今回は同氏がいかにしてサステイナビリティのリーダーとしての人材に育っていったのか、生活の中でサステナをどう意識しているのか?ちょっと意外な回答も含めて、サステナリーダーの人となりと、彼の目から見えている地球のこれからに迫ります。サステナ時代を生きるこれからの私たちのヒントになれば幸いです。

              

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Tom Bosschaert氏

19歳でサステイナビリティとビジネスに特化したデザインコンサルティング会社Except Integrated Sustainabilityを創業、間もなく同社コンサルティングの柱である理論と実践のフレームワーク「SiD」を開発し、無料公開。

2014年にはオランダの全国紙Trouwで「最も影響力のあるサステイナビリティ・プロフェッショナル」の1人に選出され、2017年には150以上のサステナ界隈のスタートアップが集うコミュニティ・コワーキング「UCo」をオープン。

現在までに20カ国以上でプロジェクトを手掛けるなど、国内外で持続可能性をリードしている。

ウルセム:日本の読者への紹介も兼ねて、少し生い立ちについて伺ってもいいですか。

トム:私は1979年にオランダ中部のヒルフェルスムという街で生まれました。両親と住んでいた家は、森の中にある温室のようなガラス張りの家で、リートフェルト(20世紀のモダニズム建築を代表するオランダの建築家)の手によるものでした。この家への絶え間ない憧憬が、私がまずは建築の道を目指したモチベーションだったと思います。

ただ、この家での暮らしは長く続きませんでした。9歳の時に両親が離婚し、私は里親のもとに引き取られました。彼らはオランダでは珍しい仏教徒の家族で、素晴らしい人たちでした。

ウルセム:なるほど。仏教的な思想が「地球の生態系を豊かにすることが、人類の長期的な繁栄に返って来る」というようなトム氏の一部のサステナ哲学のベースにあってもおかしくはないかもしれませんね。具体的に今日のビジネスの成功につながるサステイナビリティに関して考え始めたきっかけはなんだったでしょうか。

トム:「サステイナビリティ」という言葉を知るずっと前に、私の父がその基礎になる考え方を教えてくれたと思っています。口数の少ない父は、幼い頃から私に自然をどうリスペクトするか日々の行動で教えてくれました。花を摘まずに香りを楽しむ。動物を愛し、でもいじらない。自然の無限のミステリーに「なぜ」「どうやって」と疑問を持つ。

一方で、家で唯一のTVだった白黒のポータブルTVで見るニュースでは、全く逆の現象が報じられていました。私が育った80年代にはいかに人間が環境を破壊しているか連日報じられていて、自分たちはものすごく間違ったことをしていると感じました。私が科学やイノベーション、テクノロジーに興味を持ったのは、どうすれば地球上で私たちが自然と、そしてお互いに共生ができるのかという疑問からでした。

ウルセム:なるほど。お父様が身をもって見せてくれた自然への愛情と、好奇心を育んでくれたことが大きそうですね(どこかで手っ取り早くリーダーを育てる方法を聞けることを期待していた自分を反省)。それから確かに80年代頃から人々が環境破壊に関して危機感を持ち始めた印象があります。それから40年が経ちましたが、これからの自然環境をどう見ていますか。

トム:「知っていること」と「こうなればいいと思っていること」に分けてお話します。

まず私が知っているのは、私たち惑星のいちばん大切な資産は、生物多様性だということです。資源もエネルギーもイノベーションでなんとかできるチャンスがある、人間の活動は改善できる。でも失ってしまった生物の種はもう二度と取り戻せません。そして私たちはこれまでに、この地球上の生物多様性の80%を失っています。システムの勢いに押されて、しばらくの間はこの状態が続くでしょう。そして近い将来、生物がまばらになり、生態系が崩壊し、農業生産量が50%以上に減少することで食糧の価格が高騰し、さらに多くの種が失われるというちょっと怖い現実がやってきます。

一方で私が「こうなればいい」と思っているのは、世界の人々がこのことにますます気付き始めることです。そしてそれはもう現実になっている。毎週のように、国連や大企業が警鐘が鳴らしているでしょう。もし私たちが本当に望んで、都市、農業、産業、政策などあらゆるシステムを再構築して取り組めば、この流れを大きく変える力になります。私たちExceptは、世界を新しい自然であふれさせようと日々取り組んでいます。そして多くのプロジェクトがあちこちの地域やシステムに大きな変革をもたらしている。それを見ると本当にワクワクします。

ウルセム:なるほど。ちょっと横道にそれますがのそ「システムの再構築」の流れで、特にSXを急ぐべきだと思う業界はありますか?例えば最近は、アパレル業界が様々な取り組みをしていますが。

トム:アパレル関係の環境負荷は確かに見逃せませんね。でも一番改善の余地があると思っているのはなんたって医薬業界ですね。「オーガニックな薬」とか聞いたことありますか?ないでしょ?

ウルセム:たしかに!人の健康や命にかかわる部分だからサステナどころじゃないと思ってしまいがちですが、だからこそ伸びしろが大きいのかもしれませんね。 ライフストーリーに戻りますが、Exceptを設立した(ビジネスを始めた)きっかけはなんだったのですか?

トム:私はイノベーションと、当時学んでいた設計の力で、世界をみんなにとってより良い場所にするような仕事をしたいと思いました。それでそういう事業をやっている会社に就職しようと調べたのに、どこにもなかったので、在学中の19歳のときに自分で起業しました。

私は13歳の時にウェブ管理系の会社を立ち上げていた経験があったので起業自体は新しい経験ではありませんでした。「世界をより良くしたい」という気持ちだけで会社を始めたのですが、まあ具体的にどうやるかは、始めてから考えればいいやと思っていました。

ウルセム:(なるほど、それで以前話してくれたような若い失敗も経験したわけか…) 創業から22年、今の会社の目標はなんでしょうか。

トム:一言でいえば「サステイナブルな社会の基盤を作ること」ですが、単に自分たちが何かサステナなことをするというのではなく、自分たちが切り開いたサステナへの道を多くの人が後に歩いてくれるよう、氷を割って道を切り開くような仕事をしています。サステナな仕事が可能であること、収益もちゃんと出ること、世界をよりよく変えられることを世に示すことも大切だと思っています。

今年、「Orchid City(オーキッド・シティ)」という新プロジェクトをローンチしました。これは持続可能で住みやすく、お手頃に住める街づくりのフレームワークで、既にヨーロッパ、アジア、南米の3都市で建設が始まっています。日本のいくつもの自治体からも興味を持ってもらっていて、嬉しく思っています。

ウルセム:サステナでお手頃…!日本にできたらぜひ住みたいです。それからちょっと意地悪な質問かもしれませんが、個人的な興味として、今の生活の中でどんなサステナな実践をしていますか。世にサステナTipsはあふれているけれど、どれが本当にサステナな行動なのか迷うことがあります。サステナのリーダーは何を選んで実践しているのか知りたいです。

トム:数十年前にサステイナビリティに取り組み始めたとき、私は生活を見直し、自分のフットプリントを最小限にするために一生懸命でした。ベジタリアンになったし、飛行機をなるべく利用しないようにしたし、買うものすべて地球や健康、人への影響をチェックしていました。子どもを一生もたないと決めたのもその時です(筆者注:オランダでは人口爆発が環境破壊の一因であるとして、子どもを持たない、持つとしたら養子を迎えるという選択をする人が増えている)。

これはエネルギーも時間も膨大にかかるライフスタイルでした。だんだんそれが強迫観念のようになり、人生を完全に乗っ取られたようで、このままでは生活が成り立たなくなるのではと不安になっていきました。

そんな時に、個人のカーボンフットプリントという概念は、石油会社のBPが自分たちの環境への影響に対する責任を消費者に転嫁するために「発明」したものだと知りました。

Photo :
Photo : Marek Piwnicki (unsplash)

このコロナ・パンデミックで全世界が色んな活動を止め、一部自然環境が急速に回復したスポットもありましたが、世界の炭素排出量は少しも減らなかったでしょう。つまり世界のサステイナビリティに根本的な変化をもたらすために変わらないといけないのは大企業や政府であって、私たち消費者がどんなにストイックな生活をしてもその影響はたかが知れています。

こう気づいてから、私は都市、産業、政府をよりサステイナブルに改革する仕事にもっと人生の時間を捧げるようになりました。もちろん今でも生活の中でサステナは常に気にかけているし、責任ある決断をしようと心がけてはいます。そもそも私はちょっと放浪癖があって、人生で30回以上引越ししているし、持っている「モノ」が非常に少ない人生を歩んでいます。今までに2回、持ち物をぜーんぶ人に譲ってしまったこともありますが、あれは素晴らしい解放感だった。

また私が人生で一番大切にしているのは、音楽を楽しむことと、ものごとのありのままの姿を愛でること。湖に漂う葉っぱの動き、木洩れ日やその年最初の秋のにおい。会ったばかりの人がふとした瞬間に見せてくれる、その人の本当の人柄。そんなものを、ただありのままにしみじみと喜ぶことが私にとって一番楽しいことです。

でも日々の生活の中で常に百点満点のエコ市民ではありません。

Photo:
Photo: Michael Held (unsplash)

なんと、とんでもなくストイックな生活をしているのかと思えばまさかの、しかし納得の回答。

最終回となる次回は、ビジネスとしてのサステイナビリティ、トム氏が開発したSiDの実態に迫ります。

お楽しみに。

https://landing.neuromagic.com/sid?utm_campaign=SX&utm_source=PR_09

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執筆者

Deeper ライターズ

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