日本のサステナシフトの入り口は、『個人の幸福』かもしれない。~SX最先端教科書「SiD」日本上陸記念・開発者Tom Bosschaert氏インタビュー(1/3)
日本のサステナシフトの入り口は、『個人の幸福』かもしれない。~SX最先端教科書「SiD」日本上陸記念・開発者Tom Bosschaert氏インタビュー(1/3)

日本のサステナシフトの入り口は、『個人の幸福』かもしれない。~SX最先端教科書「SiD」日本上陸記念・開発者Tom Bosschaert氏インタビュー(1/3)

みなさまお元気ですか、12月半ばを過ぎた時点でほとんどの国民がもう今年は店じまいモードに入っているオランダよりウルセムです。

本日は、先日ご紹介したサステナシフト(SX)の教科書・『SiD』の開発者である、Tom Bosschaertに、素人丸出しで色々な質問をぶつけ、まさに珠玉の言葉をたくさんもらってきたのでお伝えしたく存じます。

建築家でアーバンデザイナー、そして何よりもコンサルタントとして現在オランダ国内外でサステイナビリティのパワーを束ねる若きリーダーである彼は、日本がサステイナブルにシフトするヒントをどのように語ったのでしょうか。

3回シリーズの予定でお送りする第一回目は、みなさまのご関心が高そうなビジネスとサステイナビリティシフト、SX時代を生きるビジネスパーソンの必要マインドセットなどについて語った言葉たちをまとめます。

              

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Tom Bosschaert氏

19歳でサステイナビリティとビジネスに特化したデザインコンサルティング会社Except Integrated Sustainabilityを創業、間もなく同社コンサルティングの柱である理論と実践のフレームワーク「SiD」を開発し、無料公開。

2014年にはオランダの全国紙Trouwで「最も影響力のあるサステイナビリティ・プロフェッショナル」の1人に選出され、2017年には150以上のサステナ界隈のスタートアップが集うコミュニティ・コワーキング「UCo」をオープン。

現在までに20カ国以上でプロジェクトを手掛けるなど、国内外で持続可能性をリードしている。

ウルセム:今日はよろしくお願いします。記事を最後まで読んでもらえるか分からないので、本日一番聞きたいことから訊きます。サステイナビリティ時代を生きるこれからのビジネスパーソンにとって、ズバリ、一番必要なスキルはなんでしょうか。

トム:世の中の仕組みや、真の変化の起こし方に関して新しい事実や視点をすんなり受け入れられる、オープンなマインドセットですね。具体的にはひとことで言って、「全てはつながっている」ということの根本的な理解。サプライチェーンであれ情報システムであれ、変化を起こしたければ、つながりにこそその力が宿っている。近年、社会に大きな変化を起こした会社やアクションはほぼ全てネットワークベースのものでしょう。amazonなどがその好例です。

でもそう言うと複雑で面倒くさそうだから、あまりいい顔をされません。人は概して単純な方が好きです。例えば心臓に問題があるとして、「この薬を飲めば治ります」というアプローチは分かり易い。でも手軽な単純アプローチではたいていの問題は解決しません。

世界に真のサステイナビリティ・シフトを起こすためには、サステイナビリティも複雑なものだという事実をまず受け入れてほしい。なぜならその複雑さは美しいものだからです。海だって複雑で、かつ美しいものでしょう。次の波が正確にいつどこまで来るかなんて誰にも分らない。でもありのまま受け入れ、理解すれば、その力に抗うのではなくうまく付き合い、恩恵を受けることができるようになる。合気道の基本と同じではないですか。なによりも複雑さを受け入れ、ネットワークにアプローチする解決策は、単純な対症療法と違って、本当に変化を起こせます。

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ウルセム:子育て中の親としては、子どもに身につけさせておくとよいスキルなども知りたいのですがどうでしょう。

トム:そういう意味では、子どもにもぜひこのつながりを包括的に見る力、空間的・時間的に大きな視点で理解する力を教えてあげたいです。現代の教育は、ものごとを近視眼的にバラバラで見る力しかつけてくれません。大きなシステムのダイナミクスや歴史的な進化、時間をかけた自然の崇高な営みといったものの魅力を見ることができるビジョンは、世界を歩んでいくにあたり素晴らしいスキルです。

ウルセム:なるほど。確かにいま世界には「地球にやさしい○○を使ってます」みたいな、単純でキャッチーなアクションが無数にあふれているのに、環境問題は解決していませんね…。それを踏まえると少々単純な質問かもしれませんが、これもぜひ聞きたかったので伺います。日本の企業・社会がサステイナビリティ・シフトを起こすためには、どうすれば…いや、どこから始めるのが一番いいと思いますか。

トム:大きなテーマですね。もちろん日本社会も複雑なので、私のような部外者よりもその内部にいる人が答えを見つけるのがベストでしょうが…。

ただひとつ思うのは、まずは「個人の心身の幸福」から取り組むのが日本社会を「持続可能」な未来に導く、いい入り口になり得るかもしれないということです。それから、日本のビジネス文化をもっと個人・働く人優先に変えることができれば、今よりもっとイノベーションが産まれ、時代の変化への対応力が高まるかもしれないとも思います。現代のように変化も早く不確実性が高く、一歩先に何が待っているか分からない世界では、より革新的で、柔軟で、適応する力があることは企業にとって大きな武器になりますので。

例えば、ちょっとした日々の労働文化が社員のパフォーマンスの足を引っ張っているような事実が見つかった時は変革のチャンスかもしれません。私たちは、世界中でそれを変えることの効果を目の当たりにしてきました。例えば私たちのオフィスでは、週休4日制、フレックス制、自由な自宅勤務制度などを導入しています。そして、責任を伴う自由や、フラットな組織、コミュニティ作りを心掛けています。こういったことはすべて、強く、健康的で、適応力のある組織を築いてくれます。

ウルセム:なんか「SX」というと、私はいまだに「ペーパーレス」とか、「環境にやさしい材料」とかを連想してしまうんですが、「個人の幸福」ですか…。そもそもトムさんにとって、「サステイナビリティ」とは何ですか?

トム:私にとってのサステナビリティとは、人間がこの地球上で繫栄し、生き続けることです。私たち全てが、幸せで充実した生活を送り、長期的な未来を築いていけること。しかしただ地球上で生き残っていくというのではなく、長期的に豊かな文明を発展させ続けるには、私たち人類が自分たちを取り巻くすべての生命を愛し、感謝し続けることができなければなりません。

地球の周囲を何光年探そうが、同じような惑星はありません。宇宙はもちろん魅力的ですが、私たちが望み得る最高のものは、私たちの足元にあると信じています。地球が、そして私たちの社会が、そのような理想的な場所になることが、私自身の大きなモチベーションになっています。

写真:Greg Rakozy (
写真:Greg Rakozy (unsplash)

正直、自分たちが立っているこの素晴らしい故郷を踏みつけにしながら、火星にコロニーを作ろうとするなんて、正気か?と思っています。

ウルセム:あ、なるほど…そもそも出発点としてサステイナビリティは「人類が幸福に繫栄し続ける」ことが大目的で、自然環境の保全はその手段なのですね。私たちはついサステナというと「地球にやさしく」ばかりに目が行きがちですが、どんなに地球にやさしくしても社員が過労死したりストレスで摩耗していたら意味ないわけですね…。

そういうアプローチでは、日本でもDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)に取り組もうとする企業も増えてきました。平等性についてはどうお考えですか?サステイナビリティと平等性の関係はどのようなものでしょうか?

トム:DE&Iは、私の理論においてサステイナビリティの不可欠な要素です。

システム(組織など)は調和していなければサステイナブル=持続可能ではありません。調和を欠く組織は、内部崩壊の脅威にさらされます。そういう意味でDE&Iの尊重は企業の存続を保証してくれますし、優秀なスタッフを獲得しやすかったり、内部抗争や有害な競争行動が少ない、イノベーションが生まれやすいなどの二次的な効果も見込めます。

また多様性に富み、全ての個性が尊重される組織では、持続可能性のもうひとつの必須要件であるレジリエンス(回復力)も高まります。回復力が高く、献身的なワークフォースやスタッフが確保できる。すべてが企業にとって素晴らしいことです。

ウルセム:なるほど。全てとてもいいことのように思えますが、とはいえ私を含め、サステナビリティに関心を持ちながらも、どこから手をつけていいのかわからない人はたくさんいます。何かアドバイスはありますか?

トム:私たちExceptのサイトに、サステイナビリティとSiDに関する無料のオンライン・ビデオ・トレーニングがありますのでぜひご覧になって、まずは理解を深めてください。それからSiDのクイックガイドは最近日本語に翻訳されまして、そちらも無料公開されていますので、ぜひそれもご覧いただければ。

ウルセム:さらりとPRをありがとうございます(笑)。みなさまよろしくお願いします。

SiDガイドブック(完全版) 画像:本人提供
SiDガイドブック(完全版) 画像:本人提供

2回目となる次回は、主にトム氏のヒューマンヒストリーと視点に迫ります。「森の中の温室」だった生家?どんなサステナ生活を送っている?これから地球はどうなる?

世界のサステイナビリティを牽引する若きリーダーの頭脳と価値観がいかにして築かれたのでしょうか。そして地球の未来をどう見ているのでしょうか。

どうぞお楽しみに。

サステイナビリティの若きリーダーはいかにして作られ、地球の未来をどう見ているのか ~SX最先端教科書「SiD」日本上陸記念・開発者Tom Bosschaert氏インタビュー(2/3)>

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執筆者

Deeper ライターズ

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