子宮頸がんから子どもを守る選択とは?日本と世界におけるHPVワクチンの現状
子宮頸がんから子どもを守る選択とは?日本と世界におけるHPVワクチンの現状

子宮頸がんから子どもを守る選択とは?日本と世界におけるHPVワクチンの現状

image

NHK報道記者を経て、現在5歳の女の子を育てながらフリーライターとして活動する私が、女性活躍(特に育児中の女性の社会復帰)や子育て、教育についてのニュースを紹介していきます。 今回取り上げるのは、毎年3,000人近い人が命を落としている子宮頸がんと、HPVワクチンの現状についてです。HPVウイルスが主な原因である子宮頸がんは、数少ない「予防できるがん」といわれていますが、日本のワクチン接種率は0.3%と、世界的に見ても日本の子宮頸がん予防対策は遅れています。 とはいえ、私も女の子を育てる親として、数年前に報じられたHPVワクチンの副反応への不安が頭をよぎり、接種させるべきか悩むひとりです。今回は、客観的なデータから子宮頸がんやHPVワクチンについて紹介します。将来の選択の一助になれば嬉しいです。

日本で、年間およそ1万人がかかる子宮頸がん。毎年3,000人近い女性が命を落とす病だ。近年、20~30代の若年層における発症が増えており、30歳までにがんの治療で子宮を失う人は、年間1,200人にものぼる。

子宮頸がんのほとんどは、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因だ。HPVは、性交渉経験のある女性の50~80%は感染しているといわれ、感染者のうち一部の女性が、数年、もしくは十数年後に子宮頸がんを発症する。ちなみに、HPVは男性も感染し、喉頭咽頭がん、肛門がん、陰茎がんの原因にもなり得る。

さて、ウイルスが主な原因の子宮頸がんは、「予防できる数少ないがん」といわれている。日本で承認されているHPVワクチンのうち、2価と4価ワクチンは小学校6年生から高校1年生まで公費助成による無料接種が可能だ。ワクチンは半年かけて3回の接種が必要で、すべて公費助成を受けて接種するには、高校1年生の9月末までに1回目のワクチンを打たなければならない。

しかし、HPVワクチン接種後に車椅子生活となり、副反応の恐ろしさを訴える少女たちのニュースを覚えている人も多いのではないだろうか。私自身、「万が一、重篤な副反応が出たら・・・」と、将来娘にHPVワクチンを打たせるべきか悩む親のひとりだ。とはいえ、もしワクチンを打たずに子どもが病に冒されたら、「ワクチンを打たせればよかった」と後悔するだろう。

今回は、子どもたちの将来を守るために、子宮頸がんとHPVワクチンについて考えてみたい。

20~30代の若年層における発症が増加している子宮頸がん

子宮頸がんは、子宮下部の管状の部分にできるがんで、子宮がん(子宮頸部と子宮体部のがん)のうち、およそ7割を占める。かつて、発症のピークは50歳代だったが、近年は20~30代の若年層における発症が増加している。

image

子宮頸がんの95%はHPVというウイルスが原因だ。HPVは、性交渉を経験する年頃になれば、男性も含め多くの人が感染する。感染しても9割の人は、免疫によってHPVが自然に排除されるが、残り1割の人は自然治癒せず、異形成という前がん病変を経てがんへと進行する。

image

HPVには100種類以上あり、いぼや尖圭コンジローマといった良性病変をはじめ、子宮頸がん、膣がん、喉頭咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなどの悪性腫瘍の原因となり得る。このうち、女性生殖器関連のHPVは40種類前後といわれるが、すべてが子宮頸がんを引き起こすわけではない

HPV16、18型をはじめとする14種類のHPVが、がんと関係が深い「ハイリスク型」、HPV6や11型が良性の尖圭コンジローマの原因となる「ローリスク型」に分類される。

image

このうちHPV16、18型については、前がん病変や子宮頸がんに進行する率が高く、進行速度も速い。しかし、HPV16、18型への感染は、ワクチンで予防できるのだ。

70~90%もの高い予防率を誇る子宮頸がんワクチン

現在(2021年9月時点)、日本国内で承認されているHPVワクチンは2価、4価、9価の3種類だ。2価と4価は定期接種の対象となっており、小学校6年生から高校1年生の女子は公費により無料で接種できる。もし、定期接種の年齢枠から外れてしまうと自費となり、1回の接種につき1万5千円から2万円程度かかる。

最も効果の高い9価は、日本では未だ任意接種対象となっているため、年齢にかかわらず自費で接種しなければならない。9価ワクチンを受ける費用は、1回の接種につきおよそ3万円程度だ。

image

70~90%と高い予防率を誇るHPVワクチンだが、感染した細胞からHPVを排除することはできないため、性交渉を経験する前に接種することが重要だと言われている。

また、HPVワクチンを接種したとしても、定期的な子宮がん検診の受診が勧められている。効果の高い9価ワクチンでも、子宮頸がんの原因となり得るすべてのウイルスをカバーしているわけではないからだ。

image

(厚生労働省「低い日本の検診受診率」より)

しかしながら、子宮がん検診の受診率(2013年度)は、米国で80%を超えているのに対して、日本は42.1%とかなり低い。異形成や早期の子宮頸がんの場合、症状がまったくない。だからこそ、症状がなくても定期的に検診を受けることが大切だ。

HPVワクチンの副反応とは

HPVワクチンは2009年に承認され、2013年4月より定期接種になった。しかし、接種後の運動機能障害や慢性の痛みなどの重篤な副反応の報告により、2013年6月から自治体による積極的な接種推奨は控えられている。冒頭の車椅子の少女たちの報道が頭をよぎる。

ただしその後、上記の重篤な症状の原因がワクチンだという科学的化学的根拠は示されず、厚生労働省もワクチンとの因果関係を否定している。疼痛や、運動障害といった副反応疑いの症状については、神経学的疾患や中毒、免疫反応では説明できず、機能性身体症状だと考えられている。また、世界保健機関(WHO)も世界中のデータを継続的に評価したうえで、「ワクチン接種の推奨を変更すべき安全性の問題は見つかっていない」と発表している。

💡

機能性身体症状とは 何らかの身体症状はあるものの、検査の結果、異常所見が見つからない状態のこと。症状としては知覚症状(頭や関節の痛みやしびれなど)、運動症状(脱力、歩行困難など)、自律神経等に関する症状(倦怠感、めまい、月経異常など)、認知機能症状(記憶障害、計算障害、集中力の低下など)が挙げられる。 発生頻度は10~19歳女性で高く、HPVワクチン接種の有無で頻度に差は無いとされる。 (10万人中15人)

とはいえ、新型コロナウイルスのワクチンと同様に、HPVワクチンも副反応が出る場合がある。下記の表が、HPVワクチンの副反応の内容と発生頻度をまとめたものだ。

image

厚生労働省によると、接種後に生じた重篤な症状の報告頻度は1万人あたり5人(割合にすると0.05%)とされている。(企業からの報告は販売開始から、医療機関からの報告は2010年11月26日~2019年8月末までの報告の合計)

重篤な副反応としては、アナフィラキシーや、急性散在性脳骨髄炎、ギラン・バレー症候群などが挙げられるが、これらの副反応は他のワクチンでも起こりうるものだという。

2017年までに世界中で2億7000万回以上接種され、効果と安全性が示されているHPVワクチン。海外での接種状況はどうなっているのだろうか。

子宮頸がん排除の実現が近い国も!?海外でのHPVワクチン接種状況

世界では現在、日本を含めて90カ国以上でHPVワクチンが公費助成で接種できる。各国の接種率を見ると90%近い水準の国もあるなか、日本は0.3%とかなり低い。

image

HPVは、子宮頸がんの他にも咽頭喉頭がん、陰茎がん、肛門がんなどの原因にもなるため、海外では男子への接種承認も広がっている。

オーストラリアやイギリス、北欧といった、HPVワクチン接種に早期から取り組んだ国々では、HPV感染や前がん病変の発生が少なくなり、さらにワクチン接種世代と同世代のワクチン未接種の人たちについても、HPV感染率が低下しているという。これは、「集団免疫効果」とよばれ、ワクチン接種によりHPV感染者が減ると、ワクチン未接種の人もウイルスにさらされる機会が減るため、全体の感染率下がるという仕組みだ。

さらに、フィンランドでは、HPVを原因とする浸潤がんが発生が少なくなったことが報告されている。世界の子宮頸がん対策は、日本よりもはるかに進んでいるのだ。

(参考:神奈川県医師会「子宮頸がんとHPVワクチンについて」、日本産科婦人科学会「HPVワクチン」

女性だけでなく男性も考えて欲しい。子どもの未来を守る選択とは

WHOは、2019年に「子宮頸がん排除」への声明を発表。HPVワクチンと検診によって、今世紀中の子宮頸がん排除は可能だとし、「ワクチン接種率90%」と「検診受診率70%」を2030年までの目標として掲げている。

実際、ワクチン接種率が高い国では、子宮頸がんの排除も視野に入ってきている。そんななか、日本の積極的な接種推奨の差し控えは世界の動きとかけ離れている。

近い将来、ひとりの女の子を育てる親として、子どもと話し合いながら我が子の命を守る選択をしたい。

そして最後に、HPVウイルスは男性にも感染し、さまざまながんの原因にもなり得る。今は女性だけの問題として捉えられがちなHPVワクチンだが、女性だけでなく男性も、当事者としてHPVやワクチン接種について考えてみてほしい。

image

ミテモからのお知らせ

ミテモからのお知らせ

執筆者

Deeper ライターズ

人気記事

すべての記事

新着記事

すべての記事

関連記事

すべての記事