サステナブル経営で組織が空中分解しないためにすべきこと
サステナブル経営で組織が空中分解しないためにすべきこと

サステナブル経営で組織が空中分解しないためにすべきこと

ライター
公開日
Dec 22, 2021

「サステナブル」という言葉が至るところで聞かれるようになり、ビジネスシーンでの取り組みも急速に進んでいます。

実際、2021年に行われた各社の決算説明会の資料に目を通すと、「サステナブル経営」を強く意識している企業の多さが目立ちます。

この流れは中小企業でも例外ではありません。しかし、サステナブル経営を推進したい勢力とそうでない勢力で、分断しかかっている組織も出ています。

経済的価値と社会的価値の狭間で揺れる組織の現在

サステナブル経営とは、地球環境や人権問題への取り組みといった「社会的価値」の創造と、企業としての「経済的価値」の創出を同時に目指すアプローチです。

サステナビリティに着目する日本企業は2000年代から増え始め、2015年に採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」で一気に火がつきました。

人々の意識の高まりに呼応するように、多くの企業がサステナブル経営への取り組みをスタートしています。

しかしながら、経済的価値と社会的価値の“狭間”で、迷い揺れる企業があるのも事実。例を挙げてみましょう。

  • 環境問題に意識の高い社員と利益にシビアな経営者との間で口論になり、経営者が「きれいごとで経営は成り立たない」と言い放つ
  • サステナブル経営に舵を切りたい経営者が、価値観の変化についてこられない社員を冷遇する
  • 社内にさまざまな判断基準が生まれ、意志決定にブレが生じている

どれも筆者の身近で起きた出来事です。

サステナビリティの考え方はすばらしいはずなのに、取り組もうとすると分断してしまう。なぜなのでしょうか。

サステナブルな価値観へ転換が難しい4つの理由

これまでもビジネス環境は価値観の変化を繰り返してきました。しかし、サステナブルな価値観への移行には、特有の難しさがあるようです。

理由として次の4つが挙げられます。

  • (1)転換に「恐怖」を伴う
  • (2)社会人初期に教えられた価値観が骨の髄に染み付いている
  • (3)きれいごとではどうしようもなかった苦い過去がある
  • (4)今回の価値観シフトはポーズではできない

以下で詳しく見ていきましょう。

(1)転換に「恐怖」を伴う

1つめの理由は「転換に『恐怖』を伴う」からです。

人が考え方や行動を変えるとき、現状維持バイアスが働いて、

「これまでのやり方を変えたくない」

と二の足を踏む傾向はよく知られています。

サステナブルな価値観への変化には、

「変化すると損しそうで怖い」

という恐怖の上乗せがあります。

本来“経済的価値”と“社会的価値”は両立しトーレドオフではないのですが、その事実が直感的には理解しにくいのです。

「変わってしまったら、経済的価値が失われる」と恐れる意識が、転換を難しくしています。

(2)社会人初期に教えられた価値観が骨の髄に染み付いている

2つめの理由は「社会人初期に教えられた価値観が骨の髄に染み付いている」からです。

「20代前半に上司に言われた言葉が忘れられない」という方は多いのではないでしょうか。心の底に貼り付いて、ことある毎に思い出されます。

特に、10年前・20年前に社会人初期を過ごしたビジネスパーソンは、サステナブルな価値観と触れていません。

ロジカルシンキングや成果主義がビジネスの現場を支配し、倫理的・情緒的な議論はむしろ敬遠された背景があります。

「今さら急に考え方を180度変えろと言われても……」というのが本音かもしれません。

(3)きれいごとではどうしようもなかった苦い過去がある

3つめの理由は「きれいごとではどうしようもなかった苦い過去がある」からです。

「きれいごとでは会社を経営できない」

社長がこう言うと批判されがちですが、筆者個人的には嫌いではありません。なぜなら、その言葉の裏に“きれいごとを貫けなかった過去の苦み”が見え隠れするからです。

“本当の気持ち”とは裏腹に、会社のためにと心を鬼にせざるを得なかった。自分を納得させるように「きれいごとだけでは…」と吐く。

後述しますが、そんな気持ちに寄り添うことも、サステナビリティには必要なのではと思うのです。

(4)今回の価値観シフトはポーズではできない

4つめの理由は「今回の価値観シフトはポーズではできない」からです。

サステナビリティの考え方は、“私たちが人間としてどう在るべきか”、根源を問うてきます。

「企業人として、役割を演じる」ポーズの延長線上で簡単に受け入れられるものではありません。私的な人としての真髄にまで影響する価値観といえます。

“インスタントに変われないからこそ、本物である”と捉えれば、転換がゆっくり・じっくりと起きているのも悪いことではないはずです。

“古い感覚”の人間を置いてけぼりにする社会に未来はない

価値観の変化が続く社会では、サステナビリティに限らず、古い感覚の人々を責めがちです。

糾弾する、批判する、怒る——これらも、ひとつの大切な反応ではあります。正しい怒りは、常に社会の変革を導いてきました。

その一方で、怒りを向ける“以外”の解決策も、探らなければなりません。

古い感覚の人間を切り捨てて、“古い感覚の人間が目の前にいない風景”をこしらえても、問題は解決しないからです。

古い感覚の人間にも寄り添って一緒に変わっていく

古い感覚の人間を「嫌なら会社を辞めればいい」と他の会社へ放り出しても、社会の分断が進むだけです。

本当にサステナビリティな社会を実現するために必要なのは、サステナビリティな考え方を持つ人を、ひとりでも多く増やすこと。

古い感覚を責めるのではなく、「どうしたら一緒に変われるか?」を考えることではないでしょうか。

先ほど「サステナブルな価値観へ転換が難しい4つの理由」をご紹介しましたが、“変われないその背景”に優しさのある目を向けたなら、見えてくるものがあるはずです。

ビジネス視点で肚落ちしやすい角度から学ぶ

最後に具体的なヒントをひとつ、ご紹介します。もし利益追求主義が強い人なら、ビジネス視点で肚落ちしやすい角度から、サステナビリティを学ぶのがおすすめです。

例として、マイケル・ポーターが提唱するCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)が挙げられます。

ポーターといえば「3つの基本戦略」や「ファイブフォース分析」を連想する方が多いでしょう。“経営戦略の神様”とも評される米国の経営学者です。

ポーターの最新理論であるCSVでは、企業が事業を通じてどのように社会的な課題に取り組んでいけば良いのか、具体的なアプローチが示されています。

CSVを学ぶことは、サステナブルな価値観にシフトするきっかけとなるはずです。

さいごに

利益を追求しながら、きれいごとも追求する。これは成熟した企業の在り方であると思います。

利益を追求する人・きれいごとを追求する人が、批判し合っている場合ではありません。どちらもOK、どちらも共存できる(共存すべき)時代がやってきたのです。

あえていいます、私たちは利益を追求したい。だって売上があがったほうが楽しいし、たくさんの顧客に支持されたほうがうれしいし、一生懸命に作った商品を高い値段で買ってもらえたときには、報われた気持ちになります。

そして同時に、私たちはお金だけでは動きたくありません。地球を大切にしたいし、人を大事にしたいし、仲間もお客様も世界中の人たちもみんなに幸せでいてほしい。社会をよりよく変えていきたい。

経済的価値と社会的価値は、一得一失ではありません。

両方やっていきましょう。今こそ「サステナブル」という共通言語をスローガンにして。

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執筆者

Deeper ライターズ

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