会社を辞めて、初めてきちんと理解できた6つのこと
会社を辞めて、初めてきちんと理解できた6つのこと

会社を辞めて、初めてきちんと理解できた6つのこと

ライター
公開日
Dec 17, 2021

私は今から10年ほど前、12年間勤めた会社を辞めました。

当時私が在籍していた企業は転職組が圧倒的に多く、周りの人々は一度は会社をやめたことがある人ばかりで

「前の会社でケンカした」とか、「辞めるにあたって悩んだ」とか、様々な話を聞いていました。

しかし、自分で会社を辞めてみて、改めて思ったのは、「会社を辞めるというのは、聞いていた話と、随分とイメージがちがうな」でした。

「想像していた退職」と「現実の退職」はちがう

具体的に言えば、私が想像していた退職は、6つの点で、想像と異なっていました。

それはいずれも、会社員の生活に大きな影響を与えるものだったため、ここに書き残しておきたいとおもった次第です。

1.辞めると意思表示すると大きく変わる、社内の人間関係

誰から聞いたかは忘れてしまいましたが、「辞めるときには、引継ぎに必要な期間ギリギリの、3か月前に言う」というのが、転職業界の常識(?)だと聞いたことがあります。

「辞める」というと、「職場で冷遇される」とか、「周りの人の視線が気になる」といった話があるからです。

が、私は管理職だったため「後継者を育ててから退職する」事が、会社に対する最期の責任だと思っておりました。

そのため、直属の上司には退職の1年前に「辞めます」と言いました。

ただ正直、「辞める」と宣言する前は、「そんなに急にみんな、手のひら返すように態度が変わるものか」と思っていました。

が、人間関係は、たしかに、想像以上に大きく変わりました。

冷遇されていたとは余り感じませんでしたが、まず、重要な会議には全く呼ばれなくなりました。

同じ管理職の人々からの、それまで聞こえてきていた「社内の微妙な話」を聞く機会がなくなり、「出世の本流から外れるって、こういうことなのか」と痛感した記憶があります。

このことから、上層部がいかに多くの情報を独占しているか、深く知るところとなりました。

コンサルタントとして、クライアントに「組織・情報はフラットに」などと言いながら、実は全く自分たちがフラットではないことに気づいたのです。

また、「社内の交友関係」も、大きく変わりました。

「辞める」と意思表示した途端、腫れ物に触るかのように接してくるひとがいた一方で、変わらぬ態度で付き合ってくれるひともいました。

また、面白いな、とおもったのは、「辞めます」と意思表示したときに、むしろ親近感をもってくれるひとがいた点です。

彼らは以前は、管理職である私を「体制派」とみなし、積極的には関与してきませんでした。

しかし、「辞める」と意思表示をすると、彼らの方から近寄ってきたのです。

結局「地位」というのは、社内の交友関係に、本人が意図する、意図せざるに関わらず、大きな影響があるのです。

私は、辞めると意思表示するまで、比較的自分は人に対して、分け隔てなく付き合っている、と思っていましたが、どうやら、それは勘違いだったようです。

会社の人間関係は、利害のみ、とまでは言いませんが、利害で繋がりができている部分は非常におおきい、と感じました。

2.給与より大事な価値を追うために、生活レベルを落として、貯金することは大事

私が会社をやめた理由の一つは、会社の価値観が、私の仕事観と合わなくなってきたことでした。

耐え難いほどの苦痛、ということではなかったのですが、辞める意思表示をする2年ほど前から、社長の話す言葉に、違和感を覚えるようになっていったのです。

しかし、辞めるという決断を下しにくいことの一つが、お金の問題でした。

私は管理職だったため、そこそこの待遇でした。

しかも、家族もいる。

仮に収入が下がって大丈夫だろうか?と。

これに答えを出すのは、それほどかんたんではありませんでした。

長いこと待遇と価値観、どちらを優先すべきか、悩んだ末、私は敬愛するピーター・ドラッカーの書籍*1に、こんな一文を見つけたのです。

私自身も若い頃、成功していたことと、自らの価値観の違いに悩んだことがある。一九三〇年代の半ば、ロンドンの投資銀行で働き、順風満帆だった。強みを存分に発揮していた。しかし、資産管理では世の中に貢献しているという実感がなかった。私にとって価値あるものは、金ではなく人だった。金持ちになることに価値を見出せなかった。大恐慌のさなかにあって、とくに金があるわけでも、他に職があるわけでも、見通しがたっていたわけでもなかった。だが私は辞めた。正しい行動だった。

この一文で、私は「辞める」という決意をすることができました。

ただし、無鉄砲に辞めるのは、愚かなことです。

辞めるならば、計画的にです。

私は万が一の自体に備え、1年ほど収入が途絶えても良いように、ひたすら貯金をはじめました。

そして、それとともに、生活レベルも意図的に落としたのです。

趣味の支出を大きく減らし、どうでも良い付き合いの外食を無くしました。

服を買わず、自転車で移動し、嗜好品を買わなくなりました。

この行為は大変、精神衛生上、良い結果を招きました。

というのも、「蓄えがある」ということと、「生活レベルを落としても大して問題にならない」という2つのことにより、「いつでも辞められる」という覚悟ができたからです。

結局私は「お金への不安」というのは、少しずつ貯金をすることで対処可能と結論を出しました。

これは、辞める決断をしなければ、一生わからなかったかもしれません。

3.慣れた環境(オフィス)が、いかに働きやすかったかを痛感

会社を辞めた直後、もっとも強く感じたのは、「オフィスとは、なんと働きやすい環境だったのか」でした。

コロナでテレワーク化が進み、「家だと仕事ができない」とつぶやく方も数多くいます。

「適応できないのは時代遅れ」的な形で、そういった意見が揶揄されたりもしますが、実は私はその主張、とても良くわかります。

というのも、会社を辞めてオフィスから切り離され、自宅で仕事を始めたとき、どうにも仕事にならなかったからです。

オフィスというのは、とにかく「仕事をすること」に最適化された空間です。

コピー機などの機材、雑務をこなしてくれるアシスタント、最適な空調、別に設けられた休憩する空間、娯楽の排除、長いこと座っていても疲れない椅子など、様々な工夫によって、仕事をする状態に追い込んでくれるのが、オフィスなのです。

そういった空間を提供してくれている会社に感謝したのは、残念ながら会社を辞めた後でした。

結局、私は家から少し離れたところにコワーキングスペースを契約し、そこに通うようになりました。

そこではオフィスを疑似的に再現することができたからです。

現在はそうした空間の作り方を学び、家で仕事をすることと、オフィスで仕事をすることにほとんど差はなくなりましたが、「オフィスはありがたい存在」と知り、「仕事をする空間の作り方」を真剣に考えたのは、辞めるという決断をしたからでした。

4.新しい仕事・環境で、不安があるからこそ、仕事のクオリティが高くなる

では「辞める」という決断をし、会社を辞めたあと、気持ちはどうなったのかという話です。

結論からいうと、人生がまるで違ったものになった、と思いました。

辞める前は、正直言うと不安のほうが、期待感に勝っていました。

上で書いた収入をはじめとして、ちゃんと働けるだろうか、肩書をなくした自分に仕事は来るのだろうか、など、様々な思いが去来しました。

ただ、一度辞めてしまうと、その不安が逆に力になりました。

人間は、「もうやるしかない」という状況に置かれると、力が出る、というのはおそらく本当です。

前の会社でしぶしぶやっていたことが、覚悟を決めることで、自然とできるようになりました。

例えば、毎日記事を書くこと。

古いお客さんのところを回って、仕事をくださいとお願いすること。

営業の記録を詳細に付けること。

丁寧にお客さんに接すること。

請求と回収をきちんとすること。

みんな当たり前なんですけどね。

でも、「やらないとまずい」という覚悟は、仕事のクオリティを一つ上げてくれるのは間違いないと思います。

「慣れ切った環境」ではなく、失敗できない環境に、自分から身を置くこと。

人生の節目には、必要じゃないか、と思うのです。

5.自分の真の市場価値は、想像していたことと違う

そして、会社を辞めて、次の仕事をするときにもう一つ気づいたのは、「自分の市場価値」についてです。

私はコンサルティングの仕事をしていたので、どちらかと言えば「自分の市場価値」は、自分のやってきた、職務経歴書に書けるような事に限られているのかな、と思っていました。

ところが、いったん新しい仕事や、新しい顧客と接すると、「経歴」なんてものはほとんど見てもらえず、彼らの要求にうまくこたえられるかどうかだけで、判断されるのです。

例えば私は、品質管理や人事、プロジェクトマネジメントのコンサルティングを行ってきましたが、顧客が私に価値を感じ、お金を出してくれたのは、コンサルティング会社で培った、BtoBマーケティングと営業という仕事でした。

自分の想像していた、自分の市場価値ではなく、実際にニーズがあり、大きな成果が挙げられる領域が、自分の市場価値となる。

こんな当たり前の話すら、会社を辞める前には分からなかったのです。

6.深い学びは、リスクを背負って初めて得られる

そして、もっとも私の理解が進んだのは、辞めないと分からないことが、これほど多くあった、という事実です。

「深い学びは、リスクを背負って初めて得られる」

ということを、私は知りました。

思い起こせば、確かに、会社員として働き始めた新人の頃は、1年、2年で大きく変わる人が多いです。

それは、不安の中で、必死にもがき、何とか結果を出そう、周りから認められようと頑張る人が多いからではないかと思います。

しかし、5年、10年と働くうちに、いつか「慣れ」が仕事に入り込みます。

日常的に新しいことがないわけではないですが、仕事の中で「本当にヤバい」と思えることは、ほとんどなくなります。

それは、結果的に能力の停滞、あるいは仕事への飽きにつながるのです。

私は「辞めます」と会社に宣言してから、真の意味での第二の人生が始まったと強く思いました。

それは、単純に言えば、自分を可能な限り追い込んだからだと確信しています。

特に30代半ばから40代にかけて、ほとんどの人は会社の中枢に入って裁量も大きくなり、経営陣から頼られるようになるでしょう。

しかし、逆に言えば「不安の中で仕事をし、手探りを続ける」という状態から遠ざかってしまう方も多いのではないかと推測します。

すべての人に「会社を辞めなさい」というつもりは毛頭ありませんが、会社を辞めて、初めてきちんと理解できることもあります。

選択肢の一つとして、常に心の中に留め置いてもよいのではないでしょうか。

*1 「明日を支配するもの」 P・F・ドラッカー ダイヤモンド社

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執筆者

Deeper ライターズ

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