リケジョという言葉がなくなる日は来るのか?日本で女性の理系人材が増えない理由
リケジョという言葉がなくなる日は来るのか?日本で女性の理系人材が増えない理由

リケジョという言葉がなくなる日は来るのか?日本で女性の理系人材が増えない理由

ライター
公開日
Dec 7, 2021

「リケジョ=理系女子」

いつからか日本で市民権を得たこの言葉には、「理系を選ぶ女子は珍しい」という既成概念が込められていると感じてしまう。

教育機会においてはすでに男女格差はほぼなくなっている日本において、なぜ理系を選択する女子は増えないのだろうか。

2021年の調査では、理系分野の学生に占める女性の割合はOECD加盟国で最下位となった。

これは、日本の女子学生の理系分野の能力が低いわけではなく、「女子は理系に向かない」というイメージが原因なのだろう。

理系を選択する女子学生が減ることで、理系分野で活躍する身近な女性のロールモデルも生まれにくくなっている。

このように、女子の進路選択の障壁となる”イメージ”は否応無く次の世代にも連鎖していく。

日本の女性研究者・技術者の割合とは

まず、日本の女性研究者の割合について、世界と比較したデータを紹介する(図1)。

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図1 研究者に占める女性の割合の国際比較 引用)内閣府 男女共同参画局「男女共同参画白書 (2018年)」https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-25.html

このデータでは、2018年の日本の女性研究者の割合は16.2%と29カ国中最下位で、20%を切っている唯一の国である。

2019年には16.6%と0.4ポイント上昇して過去最多となり、2003年の11.2%からゆるやかに上昇傾向にある(図2)。

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図2 女性研究者の割合の推移 引用)文部科学省「女性研究者ってどのくらいいるの?(2019年)」https://www.mext.go.jp/kids/find/kagaku/mext_0004.html

研究者や技術者などの理系分野の専門職に就くには、まずは大学で理系学部に進学する必要がある。

冒頭でも触れたとおり、2021年のOECD加盟国を対象とした調査において、日本は大学で自然科学や工学などの理系学部に進学する女性の割合が最下位となっている。

この調査では加盟国の平均が52%だったのに対し日本は27%とかなり低い水準である。[*1]

2018年度の大学の学部及び大学院における女子の割合を見ると、薬学部や看護学部は女子の割合が多いが、理学部や工学部において女子の割合が極端に低いことがわかる。(図3)

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図3 大学(学部)及び大学院(修士課程、博士課程)学生に占める女子学生の割合 引用)内閣府 男女共同参画局「進路選択に至る女子の状況と多様な進路選択を可能とするための取り組み(2019年)」https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-22.html

なぜ日本は理系に進む女子が少ないのか

日本の小・中学生の理系分野の成績は男女ともにトップレベル

男性脳、女性脳などの言葉もあるが、理系分野における男女の能力の差はあるのだろうか。

1995年から4年おきに実施されている国際数学・理系教育動向調査(TIMSS2019)の結果を紹介する。

この調査では、小学校は58カ国・地域、中学校は39カ国・地域が参加しており、日本の小学生と中学生は、どちらも上位5カ国以内に入っている。[*2]

日本の小学校4年生の算数の平均点は男女ともに593点、中学校2年生では、数学の平均点は女子593点、男子595点である。

男女の平均点の差は誤差の範囲であり、過去の調査を含めて男女の平均点に有意な差は見られない。

また世界的に見ても、男子の方が平均点が高いというわけではなく、どちらかといえば理科も算数・数学も女子の平均点が高い傾向にある。

この結果から考えると、「女子は男子よりも理数系分野の能力が劣っている」は明確なエビデンスのない刷り込みとも言えるだろう。

そして、日本の女子学生は、理系科目が不得意であることから文系を選択しているというわけではないということになる。

「男子は理系」「女子は文系」は日本の性別役割分担の歴史が作り出したもの

かつての日本では、就学や教育に関しては男子が優先され、女子に教育は不要という考えが根付いていた。

明治時代に女子の教育機会が広がる契機となったのも、日本特有の良妻賢母を育てるという思想によるものである。

戦前の高等女学校は、キャリア形成を目的とする場ではなく、あくまでも家庭における良い妻や良い母親を育成することが目的であった。

戦後は義務教育が男女共学となり、女子にも教育の門戸が広く開かれた。

1990年代以降は4年制大学などの高等教育に進む女子が増加している[*3]。

しかし、現代も女子の理系進学者が少ないというデータにもあるように「男子は理系」「女子は文系」という無意識のジェンダーバイアスは依然としてなくならない。

「男の子だから理科に興味がある」

「女の子だからそこまでバリバリ勉強はしなくても...」

子育てママ同士の世間話程度でも、性別によるイメージの刷り込みは存在していると感じる。

それは日本では、「女らしさ」「男らしさ」といったジェンダーによる決めつけが根強く残っていることが原因だろう。

家庭での刷り込みから始まり、学校やメディアなどによって成長段階で植え付けられた固定観念は、進路選択に大きな影響を与える。

少女漫画を読むのが好きだった小学生時代、なぜ主人公の女の子はみんな算数が苦手なのだろうと不思議に思っていた。

リケジョの台頭後は、ドラマの中の理系女子は必ずと言っていいほどシャツをズボンにいれて、古臭い眼鏡をかけているのも不愉快だった。

女子と理系に関するジェンダーバイアスはこんな風に、日常のあちこちに潜んでいる。

日本のジェンダーギャップ指数の順位は、156カ国中121位と先進国の中でも最低レベル、ジェンダー平等に関しては大きく遅れをとっている。

医学部入試における女子差別や、「女性は話が長いから会議が長くなる」という元総理の発言が世界で問題視されたことは、遠い過去の話ではなく、残念ながら"今"の問題なのである。

女性の社会進出が進んだ現代においても、ワンオペ育児に悩んでいる女性は多く、育児家事は女性の仕事という認識から脱却できていない。

小学生が分かれ道?「女子は理系に向かない」はいつから?

将来の進路選択の第一歩は家庭から

子どもが進路について考えるとき、両親の職業や学歴を意識することが多い。

女子の進路選択は、保護者の最終学歴、とりわけ母親の最終学歴の影響を受けるというデータもある。[*4]

母親が技術者や研究者である場合、子どもにとって最も身近なロールモデルとなり、理系を選択するハードルは下がるだろう。

つまり、そもそも女性の技術者や研究者の少ない日本では、負のスパイラルは止まらないともいえる。

理系分野に興味をもつきっかけは、幼少期の親による働きかけが鍵となる。

博物館に出かけたり、星空を眺めたり、虫とりに夢中になった経験は、のちのちの進路選択に活きてくる。

就学前にこのような働きかけができるのは、「理系の楽しさを知っている」か「子どもの可能性を信じている」かにつきるだろう。

子どもの可能性を信じるには、「女らしさ」や「男らしさ」といったジェンダーによる決めつけをまずは取っ払うことから始めなければならない。

子育ては、「自分が育ててもらったように育てる」人が多い傾向にあると感じる。

自分に与えられた教育や進んだ進路を基準に考えていると、知らないうちに我が子の可能性を狭めていることもあるのだ。

中学校以降の教育環境における影響とは

日本の大学で理系に進むためには、高校の段階で理系科目を履修する必要がある。

小学生までは性別による差をそこまで意識していなくても、思春期に差し掛かると、無意識に性別役割分担が刷り込まれてくる。

その結果として、理系を選択する女子は特別な存在となり、少数派となっていく。

さて筆者はもっとも女子の割合が少ない工学部、しかも電気系の出身である。

進学当時の2000年代前半は、女子が1割以下であった工学部へなぜ進学したのか。

当時を振り返ってみると、教育熱心な家庭の多い女子校に通っていたことが大きかったと思う。

理系に進む女子が多数派の中高一貫校では、特に成績が良いわけではなかった私でも、理系を選択することは自然なことだった。

理学部や工学部への進学のハードルとなると言われている物理の選択者も多く、当時の物理教師も女性だったと記憶している。

中高生は友人関係や教員など、周りの環境に大きく影響を受けるという、典型的な事例である。

「女性の役割」や「異性の目」を意識せずに、のびのびと思春期を過ごし、進路選択ができたことは、性別による不平等が存在する社会を経験した今では、とても恵まれていたのだと感じる。

女子校や男子校といった別学は、世界のジェンダー平等の流れからは逆行していると指摘されることもある。

しかし日本の場合は、「女らしさ」「男らしさ」から唯一解放される場所になっているのは、なんとも皮肉なことである。

まとめ

「理系と女子」の問題を解決しないと、少子化の進んでいる日本において、人口の半分の人材を失うことになる。

女性と男性、理系と文系、どちらかが優れているということではなく、将来の自分のために純粋に選択したい方を選択できるのが健全な社会なのだ。

女子の将来の選択肢が、能力ではなくイメージや価値観によって制限されているという現状は早急に改善すべきである。

そしてジェンダーによる刷り込みだけでなく、「理系に進む女子は特別」「理系は優秀」という決めつけも取り払い、幼少期からの働きかけによって垣根を低くすることも重要であると考える。

筆者は現在小学生の女児を育てているが、宇宙好きな彼女の将来の夢は天文学者。

近い将来、理系を選択する女子が特別ではなくなり、「リケジョ」という言葉が無くなっていることを願うばかりだ。

<参考資料>

*1

NHKニュース「理系分野の学生に占める女性の割合 日本はOECD加盟国で最下位(2021)」

*2

文部科学省「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2019)のポイント(2019)」

*3

国立教育政策研究所「教育における男女間格差の解消――日本の経験」(2014)

*4

内閣府委託調査「女子生徒等の理工系進路選択支援に向けた生徒等の意識に関する調査研究調査報告書(2018年)」

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執筆者

Deeper ライターズ

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