洗濯機で洗える高品質ウール、メリノに見るウールのサステナビリティ
洗濯機で洗える高品質ウール、メリノに見るウールのサステナビリティ

洗濯機で洗える高品質ウール、メリノに見るウールのサステナビリティ

ざっくり編んだセーターや、柔らかいニットが恋しい季節ですね。ウールは好きだけど、クリーニングや手洗いが必要という理由で、敬遠することはないでしょうか。そんな方におすすめしたいのが、洗濯機で丸洗いできる気楽さと、カシミアに次ぐ質の高さを併せ持つメリノウールです。暑いときは涼しく、寒いときは暖かさを保つ美点に加え、抜群の肌触り、防臭機能、日焼け止め効果といった特長を誇ります。

メリノウールは、ハイエンドファッションブランドで多数採用されているほか、スポーツ用品メーカーがこぞって使用している素材で、作業着や軍服など実用的な面でも評価されてきました。最大の産地はオーストラリア。中国、アメリカ、ニュージーランドと続くものの、品質の高さではオーストラリアとニュージーランド産のものに軍配が上がります。

メリノウールの特長

まず初めに、メリノウールの特長を列挙してみます。

・肌触りが良い

・軽くて柔らかい

・暑いときは涼しく、寒いときは暖かい

・汗を吸い、放出する

・吸水力、保水力が高い

・匂いを吸収する

・UVカット機能がある

・難燃性が高い

・洗濯機で丸洗いできる

洗濯機で洗える高品質のメリノウールは、一度使うと手放せません。筆者が住むニュージーランドでは、メリノウール素材のインナーをはじめレギンスや靴下、セーター、ニットキャップ、マフラー、手袋、スポーツウェアなどがさまざまな価格帯で手に入ります。オセアニア人はヒートテックの代わりにメリノウールのサーマルインナーを愛用し、手洗いすることなくウールのセーターを楽しんでいるのです。

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2つの短所

マイナスポイントについても触れておきたいと思います。メリノウールの短所は2つ考えられます。1つ目は、保水力が高い性質の裏返しで乾きづらいこと。湿度の高い梅雨のような日が続くと、メリノウール製のニットが乾きづらいのは否めません。

2つ目の短所は、フェルト状になりやすいことです。これは厚みのある靴下で感じることで、毎日洗うと水に濡れる機会が増え、何度も洗濯するうちに糸が縮んでフェルト状になってきます。この特徴を利用して、編み物好きな知人は本来のサイズより大きめに編んで故意に洗濯を繰り返し、フェルト状のパソコンバッグや室内履きを作るほどです。

この記事を書くにあたって調べたところ、毛玉ができやすいとの声を見かけましたが、筆者の経験ではメリノウールで毛玉に悩んだ記憶はありません。

メリノウールの歴史

次にメリノウールの歴史をご紹介します。メリノウールを生み出すメリノ種の羊は北アフリカ原産で、13世紀頃からはスペインで飼育されていました。メリノ種から取れるウールは質が高く、利益を独占したいスペインの貴族や教会はメリノ種の輸出を禁止していました。

しかし1797年(1788年との説もあり)、オーストラリアに初めてメリノ種が持ち込まれます。その後、より上質なウールの生産に適した個体を選択的に飼育することにより改良が重ねられ、現在に至ります。

ニュージーランドにメリノ種が入ってきたのは1814年です。オーストラリアから輸入した種と、ドイツやフランス、アメリカ、イギリスなどから連れてきた種の交配を重ねることで世界的に高く評価される品質を生み出しました。

オーストラリアとニュージーランドのメリノはその質の高さで知られ、現在ではジョンスメドレーやマックスマーラ、ロロ・ピアーナをはじめとするファッションブランドで用いられているほか、上質なスーツやスポーツウェアの素材としても採用されています。

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エシカル羊毛の認証

「ミュールジング」という言葉を目にしたことがあるでしょうか。メリノ種の羊に対する特有の処置で、幼少期にお尻の皮膚を切り取ることをいいます。メリノ種はより多くの羊毛が取れるように品種改良されたために皮膚面積が大きく、皮膚にシワが多いといった特徴があります。このシワに排泄物がたまって虫が湧き、病気にかかるのを防ぐ目的でミュールジングを行い、お尻の部分に毛が生えてこないような処理をするのです。

ミュールジングは多くの場合、四肢を固定した状態で麻酔や痛み止めを使わずに行われるため、動物愛護の観点から非難を集めています。

メリノウールの最大の産地であるオーストラリアでは2021年11月現在、ミュールジングが禁止されていません。下記はミュールジングに反対するブランドの一部で、一覧はこちらで確認できます。

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世界第3位のメリノウール産出国であるアメリカではミュールジングは行われておらず、第4位のニュージーランドでは2018年にミュールジングが法的に禁止されています。なお、世界第2位の中国についての情報は見つけられませんでした。

ウールに対する世界的な基準の1つにRWS(Responsible Wool Standard)があります。RWSは羊と、羊が育まれる土地に対する基準で、羊への人道的な扱いと福祉、土地の管理方法、羊毛の生産から製品化に至るすべての製造工程、サプライチェーンの健全性についての審査を受け、条件を満たした場合に認証が与えられます。RWS認証を得たウールには、非人道的なミュールジングを受けてた羊の毛は含まれません。

このほかエシカルなウールに対する認証としては、ZQメリノがあります。ZQメリノは羊の健康や安全、人道的な扱いを最優先するとともに地球環境、ウールの質、トレーサビリティ、ウールの生産に関わる人たちや周辺の環境に対する厳しい基準に合致したウールに対する認証です。ZQメリノに認定されたウールは、ミュールジングを受けていない羊から取ったことが保証されています。

羊の環境負荷

牛のげっぷに含まれるメタンガスが、地球の気候変動に大きな影響を与えているのはよく知られています。では、羊の環境負荷はどの程度なのでしょうか。

世界中で飼育されている羊の数は2014年の時点で約120万頭、牛は150万頭弱です。

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羊や牛が1日あたりに排出するメタンガス(CH4)の量は、夏と冬で少しずつ異なります。羊は夏に多くなり18.6g、牛は冬に多くなり154.8gとの調査結果があり、羊は牛のおよそ12%のメタンガスを出すことがわかります。これは決して無視できる数字ではありませんが、牛に比較して羊が出すメタンガスの量はそれほど大きいわけではないと考えて良さそうです。

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しかしメリノウールに限らず、ウールを生産する過程で排出される二酸化炭素の量はアクリルやビスコース、コットンを抑えて最も多いとされています。少しでも環境への負荷を抑えるためにはどうすればいいのか、次の章で見ていきましょう。

サステナブルでいこう

着なくなったセーターをほどいて、別のものに編み直すといったエピソードを見聞きしたことがありませんか。筆者が子どもの頃にはかろうじて残っていた、毛糸のリサイクル方法です。

日本最大の繊維産地として知られる愛知県一宮市には、リサイクルウールという言葉が生まれる遥か昔から、羊毛再生文化がありました。使わなくなった羊毛を集めて新しい繊維に生まれ変わらせる活動を50年以上前から続けてきたのが毛七です。

紳士服のAOKIでは、1996年からウール衣料を下取りしてリサイクル製品に再生するウール・エコサイクル・プロジェクトを行っています。対象商品はスーツや礼服、コート、ジャケットなど。他社製品も引き取り可能で、AOKIで買い物をすると礼服やスーツが2万円引きになるそうです。

パタゴニアが2020年春夏に発売したウール生地の商品の19%がリサイクル・ウールから製造されています。ニュージーランドを代表するアウトドアブランドのmacpacは、メリノウールのリサイクル事業を行っているほか、再生素材のみで作られたニットを販売するMARTHA ETHICAが登場するなど、リサイクルウールの動きも活発です。

エネルギー消費の点では原毛からウール生地を作る過程で必要なエネルギーはポリエステルよりも18%少なく、水に関しては100着のセーターを作る際に必要とする水はコットンに比べると70%少ないと言われています。

羊の毛から取れるウールはマイクロプラスティック汚染と無縁で、そもそも土に還る素材である点でサステナブルであると言えます。

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最後に

メリノウールの歴史から特徴、ウールのエシカル認証制度、羊が環境に与える影響、ウール関連のサステナブルな話題についてご紹介しました。筆者自身、この記事を書くためのリサーチ中に初めて知ったことも多く、よりサステナブルに暮らすには?エシカルであるためには?と改めて考えてさせられました。

今のところ新しく手に入れるならセカンドハンドのものを探し、一度手に入れたら長く使い続けるのが個人レベルでできることかなと思っています。

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執筆者

Deeper ライターズ

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