女性が選べる避妊方法を増やすことは、自分の人生を主体的に決められる人を増やすこと
~リプロダクティブ・ライツ先進国オランダの避妊事情(2)
女性が選べる避妊方法を増やすことは、自分の人生を主体的に決められる人を増やすこと
~リプロダクティブ・ライツ先進国オランダの避妊事情(2)

女性が選べる避妊方法を増やすことは、自分の人生を主体的に決められる人を増やすこと ~リプロダクティブ・ライツ先進国オランダの避妊事情(2)

ライター
公開日
Nov 5, 2021
第1回目では、女性が選ぶ避妊具 ミレーナの進化版「キレーナ」についてご紹介した。次に、産むか産まないか、いつ・何人子どもを持つかを女性自身で決める権利「リプロダクティブ・ライツ」(性と生殖に関する権利)について、オランダと日本の事情を比較しながら紹介したい。

私は一人目の子どもを日本で出産したのだが、産後入院中、同時期に出産した女性たちが一部屋に集められ、助産師に「授乳中はピルが飲めないので、コンドームを使うしかありません。お家に帰ったら旦那さんにお願いしてみてくださいね」と言われたことがあった(病院や担当者によっても対応は異なると思う)。妊娠しうるのは自分なのに、男性にお願いするしか方法がないんだと違和感を感じたのを今でも覚えている。

今回驚いたことは、オランダでは様々な避妊のための選択肢が示され、それぞれの選択肢を理解できるよう細かく説明され、なおかつ、その選択肢の多くが女性主導のものだった点だ。

しかも自己負担分はありつつ保険が適用されるため金額がまるで違う。

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日本でミレーナを利用する際、月経困難症や子宮内膜症の治療などであれば保険適用になるものの避妊目的の場合は保険適用外となるため金額にして4万円を超えてくる。

いつ妊娠するか。いつ妊娠しないのか。自分の身体と人生のことを自分で決めるために情報と選択肢が多く与えられる嬉しさを噛み締めつつ、ふつふつと疑問が湧き上がってくる。

なぜ、こんなにも違うのか、と。

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4歳から人権教育・性教育が始まるオランダ

そもそも、オランダは人権教育・性教育先進国だ。性教育も学校によっては4歳から始まる。とはいえ4歳児に急に性行為について話すのではない。まずは大切な人。そして、少し嫌だなと感じたら断っても良いこと、そしてそれは失礼なことではないことも学ぶ。ハグをしたいと思った相手が嫌だと言って断ったときも、その意思を大切にすることが大切だと理解する。つまり、性教育は人権教育から始まるのだ。自分を見つめ、ジェンダー・アイデンティティなどについても様々にあるということを理解する。

もちろん、もう少し年齢が上がれば具体的に性感染症予防や妊娠したくない時にはどのような避妊方法があるかも包み隠さず話し、教える

性教育の充実は望まない妊娠を防ぐ

日本で早期からの性教育に反対する際に聞かれるのは「寝た子を起こすな」という表現だ。性行為や避妊方法などについて早くから教えると性的に奔放になって問題になる、という論理である。実際に、文部科学省の定める学習指導要領によると、現在日本の中等教育では「妊娠の過程は取り扱わないものとする」とされている。

一方で、実際に4歳から性教育(人権なども含む包括的性教育)を始めるオランダでは、望まないティーンエイジャーの妊娠率が低い。ヨーロッパの国々の中では最も少なく、さらにアメリカと比べるとオランダの望まない妊娠率は8分の1に留まる。

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オランダはヨーロッパで最も15歳〜19歳の望まない妊娠率が低い/出典:オランダ中央統計局(CBS)

つまり、包括的性教育が早く始まっているからこそ、自分自身も相手も大切にし、望まない性行為を断ることができ、適切な避妊措置を取ることもできるのだ。

実際に英語で「タブルダッチ」なる俗語があるが、これはコンドームプラスIUDやピルなど、2種類の避妊方法を組み合わせて利用することを指す。避妊についてはIUDやピルが高い効果を誇るが、感染症予防についてはやはりコンドームが効果的であり、これら2種類を組み合わせることで、より安心して大切な人と触れ合うことができるためだ。性教育が早く始まるオランダだが、望まない妊娠を避けるための念入りな避妊の代名詞として認識されるほどなのである。

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男性が決定権を握る日本の避妊事情

日本家族計画協会の2016年の調査によると、日本で使われる避妊方法のうち82%が男性用コンドーム、19.5%が腟外射精(そもそもこの方法は避妊効果があるとは言えない)と、圧倒的に男性が決定権を握っている現状がある。女性による低用量ピルの服用は4.2%、IUDなどの利用は1%に満たない。

そもそも、最も多く利用されるコンドームさえも実は不確実な避妊手法に分類されており、コンドームでの避妊では100人中18人の妊婦が誕生すると計算される。

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避妊手段、メリット・デメリットとその効果/出典:バイエル薬品ウェブサイト

ここで最も問題なのは、自分の人生と身体のことであるのに、女性が主体的に選んで実践できる避妊方法が少なく、高価で、しかもそれを選ぶことすら「良し」とされていないことにある。

産むか産まないか、いつ・何人子どもを持つかを自分で決める権利は「リプロダクティブ・ライツ」(性と生殖に関する権利)と表現される。妊娠や出産、避妊、中絶について十分な情報を得られ、生殖に関するすべてのことを自分で決定できる権利だ。しかしWHOをはじめとする国連や国際機関が必要不可欠であると提唱するのにも関わらず、医療が発達しているはずの先進国日本で、女性の手の届かないところに留められているのである。

実際に今年ジョイセフが発表した、15歳〜29歳の男女約1000人を対象に行った調査結果によると、3割の女性が「避妊せずに性交渉を行ったことがある」と回答し、その理由について、5人に1人(22.7%)の女性が「相手に言いづらかったから」、16.3%の女性が「避妊したいと言ったが相手がしてくれなかった」と回答している。

女性主体の避妊についてはまだまだ偏見もある。

先述のジョイセフの調査結果の中でも、女性が避妊アイテムを用意することについて男性の約4割が驚くと回答している。自己決定しようとする姿勢なのにも関わらず、「性的に奔放すぎる、だらしがない」として受け止められてしまうのだ。

象徴的なのは、女性主体の避妊方法として国際的に最も一般的であるピル(経口避妊薬)が認可されるまでの道のりではないだろうか。日本では34年間にも及ぶ働きかけを要したのに対し、男性のための勃起不全治療薬バイアグラは、申請から半年でスピード承認されている。日本でピルの認可が下りたのは1999年、バイアグラが許可された翌年であり、国連加盟国では最後の承認だった。政治の現場から女性の地位向上に従事した元衆議院議員の円より子氏は、「国会での男性優位性や女性への偏見により時間がかかった」とBBCからの取材に対して答えている

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最近でも、コロナ禍で性暴力にさらされている女子児童・生徒が増えているとして、性暴力を受けたり避妊に失敗した時に利用するための緊急避妊薬(モーニングアフターピル)のオンライン販売を可能にするか議論する検討委員会の場でも、「若い女性が悪用するかもしれない」などと言った意見が出たり、産婦人科医の91%が緊急避妊薬の薬局販売に反対であるかのように見せた日本産婦人科医会による「作為的」な調査結果が提出されるなど、道のりは長い。学生の女性が妊娠し、相手男性から中絶の同意書にサインをしてもらうことができなかったため病院に中絶手術を断られ、結果出産・遺棄し逮捕された胸の痛む事件も起きている。

妊娠出産とは望んでいても心身・金銭的に負荷がかかることだが、望んでいない状況であればなおさらその影響は計り知れない。当事者である女性が自分の意思で自分の人生を左右する決定をすることができることは、法に守られるべき人権であり、社会の基盤であるはずだ。キレーナを始めとする、女性主体の避妊の選択肢が日本で一般的に広く利用できるようになることを強く望むと同時に、政治などの意思決定の場により多くの女性が立つ必要性を改めて訴えたい。

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