女性が選ぶ避妊具 ミレーナの進化版「キレーナ」って?
~リプロダクティブ・ライツ先進国オランダの避妊事情(1)
女性が選ぶ避妊具 ミレーナの進化版「キレーナ」って?
~リプロダクティブ・ライツ先進国オランダの避妊事情(1)

女性が選ぶ避妊具 ミレーナの進化版「キレーナ」って? ~リプロダクティブ・ライツ先進国オランダの避妊事情(1)

ライター
公開日
Nov 4, 2021

「どれにする?」そういって産褥看護師が教えてくれた避妊の選択肢の多さに私は目を丸くした。

避妊についての知識と選択肢へのアクセスが重要視されるオランダでは、産後・授乳中であっても、男性用・女性用コンドームはもちろん、エストロゲンを含まない経口避妊薬(ピル)やホルモン剤注射、子宮内避妊器具(IUS)など数多くの選択肢の中から選ぶことができる。

産後私を担当してくれた産褥看護師は丁寧にそれぞれの選択肢についての仕組み、メリット・デメリット、コストや利用可能な時期などを説明してくれた。説明しなければいけないチェックリストまであるらしく、ひとつずつリスト上の項目をチェックしながら。

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IUS(ミレーナやKyleenaなどの子宮内避妊具)による避妊の仕組み/Image via バイエル薬品

ミレーナは子宮内に装着するT字型の器具で、ここに付加してある黄体ホルモンが持続的に放出され続けることで子宮内膜が厚くならず、妊娠の成立(受精卵の着床)を防ぐ。子宮入り口の粘液も変化するため、精子が膣の中から子宮内に侵入するのを阻む役割もあるそうだ。IUSとはIntrauterine System(子宮内システム)の略で、広くはIUD=Intrauterine Device(子宮内デバイス)と呼ばれているそうだ。

教えてもらった情報を元に自分なりに咀嚼し、調べた結果、私はIUDを選ぶことにした。最近日本でもIUDの一種「ミレーナ」が一部で話題になっており、私のライフスタイルに合いそうだという理由からも気になっていたのだ。

日本では産婦人科医や助産師の女性たちが中心になり、女性が主体的になって行う避妊の重要性やミレーナという選択肢についてソーシャルメディア上などで活発に発信している。

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ミレーナについて医師に質問を投げかける性教育YouTuberで助産師のシオリーヌさんこと大貫詩織さん

まずIUDのメリットはピルのように飲み忘れる心配がないものの同水準の高い避妊成功率を誇る点だ。ピルは経口避妊薬なのでホルモン剤を飲み薬として飲むため身体の他の箇所にも作用してしまう可能性がある。例えば、乳がんや血栓リスクが上がる。対してIUDは子宮内にホルモンを持続的に放出することで局所的に作用するため、これらのリスク増加を避けることができる。

IUDにもいくつか種類があり、ホルモン剤が塗布してあるミレーナ、銅付加タイプで別名子宮内コイルと呼ばれるものなどもあるらしいことがわかった。製品によって異なるが、オランダでは保険適用で医師による装着も含めて2万円前後で3年〜5年ほど効果が続く。長期的に見れば年間1万3000円(オランダ・21歳以上)ほどかかるピルよりも割安になる計算だ。

以前日本でピルを飲んでいたときは年間3万円程度かかっていた。5年だと15万円にもなる。なおオランダではピルは保険適用になり、21歳以下の女性は自己負担なしで入手することができる。

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アップルのイヤーポッズと比較したときのミレーナのサイズ。とても小さい/Image via バイエル薬品

そうして迎えた産後の6週目の検診でIUDを利用したいと伝えると、産科医からは返ってきた言葉は予想していないものだった。

「ミレーナとキレーナ、どっちがいい?」

「キレーナ」※という初めて聞く言葉を前に目が泳ぐ私に産科医はにっこり微笑んで、図を取り出して説明をしてくれた。

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※Kyleenaはオランダではキレーナと発音される。英語ではカリーナなどと呼ばれているかもしれない

「ミレーナとキレーナはほとんど同じです。ふたつの最も大きな違いはホルモン剤の使用量。ミレーナが54なのに対し、キレーナは17と、約3分の1ほど。高い避妊率はそのままに、身体への負荷を減らすことができます。現状の月経量に問題がなく、避妊目的で使用する場合はキレーナをおすすめします」

同席していた新人研修医の女性はミレーナを入れてから生理時出血がほぼなくなったと言う。ちなみに、月経量が多かったり、子宮内膜症治療を視野に入れる場合はキレーナよりもミレーナの方が効果的な場合が多いらしい。

産科医は続ける。

「ミレーナが広く一般利用されるようになったのは今から23年ほど前。私は新人研修医として医療の現場に立ち始めた頃だったのでよく覚えています。当時から今に至るまで、多くの人への説明や装着、アフターフォローなどを担当しました。キレーナはミレーナのいわば進化版。数年前から利用できるようになりました。とても良い選択肢だと思いますよ」

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ミレーナの販売が開始されたのは今から30年前の1991年。キレーナは4年前の2017年から販売されている/Image via バイエル薬品

日本でようやくミレーナが(女性たちの間で)市民権を得てきたと感じていたのに、まさかオランダではミレーナの利用が広く進んでから23年も経ち、さらにはまさか次世代版キレーナなるものがすでに出ているなんて驚きだった。

結局私はこのキレーナを選ぶことにした。処方箋を書いてもらい、これを持って近くの薬局で150ユーロ(日本円2万円)ほどで箱入りキレーナを入手し、産後12週目に産科医に装着してもらう仕組みだ。痛み止めと炎症防止のため鎮痛剤のイブプロフェンを前後3日ほど飲むように言われたが、特に装着時・装着後の痛みやトラブルなく装着は完了した※。

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※オランダでは装着後初めての生理が終わった後に脱落がないか念の為医師に確認してもらう必要がある。

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薬局で購入したキレーナ。中にはキレーナと説明書、シリアル番号の入った紙などが入っている。写真は筆者撮影

第2回では、産むか産まないか、いつ・何人子どもを持つかを女性自身で決める権利「リプロダクティブ・ライツ」(性と生殖に関する権利)について、オランダと日本の事情を比較しながら解説する。

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