車イス、ジュニア、プロがミックスで戦う、第2回WJPチャレンジテニス レポート
車イス、ジュニア、プロがミックスで戦う、第2回WJPチャレンジテニス レポート

車イス、ジュニア、プロがミックスで戦う、第2回WJPチャレンジテニス レポート

WJPチャレンジテニスとは

2021年10月23日(土)に、第2回WJP CHALLENGE TENNIS by BNP PARIBASが、千葉県柏市にある、公益財団法人 吉田記念テニス研修センター(TTC)にて行われた。

WJPは、Wheelchair(車イス)、Junior(ジュニア)、Professional(プロ)の略だ。

一般的なテニスの大会であれば、これらの選手が同じコートに立って戦うことはないが、この大会では、たとえば、車イス選手とプロ選手がダブルスを組み、さながら異種格闘技戦のように戦うのが特徴だ。

このような特徴的な試合を行うのは、この大会の目的に関係する。

この大会では主な目的の一つに、「スポーツを通じダイバーシティを理解する機会とし、より良い社会の実現に貢献する」(関係者向け資料より)というのがある。

第2回 WJPチャレンジテニスの模様を通じて、この大会が目指すダイバーシティ・インクルージョンについて紹介したい。

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第2回 WJP CHALLENGE TENNIS by BNP PARIBAS パンフレット

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公益財団法人 吉田記念テニス研修センター(TTC)インドアコート https://www.tennis-ttc.or.jp/

多様な出場選手たち

テニス国内ダブルスランキング1位、現役最年長世界ATPシングルスランカーのプロテニスプレーヤーである松井 俊英選手、車イステニスプレイヤーとして、国内ランキング4位、世界ランキング19位で東京2020パラリンピックに出場した荒井 大輔選手、JTAランク シングルス17位の大前 綾希子選手、ITF車いすテニスジュニアランキングで史上最年少で1位の座に就いた小田 凱人選手など、18名の選手が2チームに分かれて、チーム対抗で競い合った。

出場選手

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大会はスポーツ庁のガイドラインに準じたコロナ対策のもと、無観客およびライブ配信にて行われた。

ユニークなトーナメント

チーム対抗で様々な組み合わせのもと、8試合が行われた。

  1. プロ vs プロ(シングルス)
  2. プロ vs ジュニア(シングルス)
  3. 車イスジュニア vs ジュニア(シングルス)
  4. 車イスジュニア vs 車イスプロ(シングルス)
  5. 車イスプロ vs 車イスプロ(ダブルス)
  6. プロ・ジュニア vs プロ・ジュニア(ミックスダブルス)
  7. 車イスプロ・ジュニア vs 車イスプロ・ジュニア(ニューミックスダブルス)
  8. プロ・車イスジュニア vs プロ・車イスプロ(ニューミックスダブルス)

上記の通り、普段の試合では見られないさまざまな組み合わせだ。

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車イスプロ・ジュニア vs 車イスプロ・ジュニア(ニューミックスダブルス) 右手前は齋田 悟司プロ(車イス)で、パラリンピック6回出場している。 ジュニアの選手と車イス選手、それぞれの強みを生かした戦術・フォーメーションが見どころであった。

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プロ・ジュニア vs プロ・ジュニア(ダブルス) ジュニア選手にとっては真剣勝負の試合で、プロの選手とダブルスを組む、プロの選手のボールを受ける、という経験ができるのは、プロを目指すうえで大きな成長の糧になる。

車いす選手と健常者がペアでテニスをするニューミックスダブルス

ニューミックスダブルスとは、車イス選手と健常者選手がペアを組むダブルスのことを指す。

ルールとして特徴的なのは、健常者が打つ場合はワンバウンド内でボールを返す必要があるが、車イス選手が打つが場合は、ツーバウンド内であればよい点である。

機敏に動け、瞬発力のある健常者がボールをワンバウンド内に拾うか、機敏さ・瞬発力には劣るがトップスピードに乗ると速い車イス選手がワイドに打たれたボールをツーバウンド内に打ち返すか、選手同士で呼吸を合わせて、一球一球瞬時に判断するプレイが見ものだ。

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プロ・車イスジュニア vs プロ・車イスプロ(ニューミックスダブルス) 左から二番目の小田 凱人選手は、ITF車いすテニスジュニアランキングで史上最年少で1位の座に就いた。

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プロ・車イスジュニアの組み合わせだが、カテゴリーの違いを超えて、両者とも試合に対する眼差しは真剣そのものだ。

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最後はお互いの健闘を称えあう。

車いすテニスプレイヤーの凄さ

車いすプレイヤーは、当然ながら上半身のみを用いてプレイするので、胴体や腕の強靭な筋力が必要になる。さらにテクニックも必要で、サーブであれば健常者プレイヤーよりも低い打点で打つことになるので、スピンをかけることで、強いサーブでもネットにかからずサービスエリアに落とすことができる。

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車いすテニスは、健常者のようにサイドステップやジャンプができないので、高いボールであったり、体よりも遠いボールは不利になる。よって次のボールの予測を行い、そのためのポジションを早くとることが求められる。

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リターンした後、すぐに次のボールを打てるよう一旦バックし次のボールのリターンに備える。

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車いすを繰り、素早く打点に入る。

健常者であれば次のボールに反応するための予備動作としてスプリットステップを行い、素早く反応できる。しかし、車いすプレイヤーの場合は一度止まってしまうとスピードに乗るまでに時間がかかり反応が遅れるので、すぐに次の打点に移動できるようコート内を常に走り回り、スピードを落とさないようにプレイする。車いすをそのように繰ることをチェアワークというが、そのチェアワークも車いすテニスの見どころだ。

車いすプレイヤーは、右腕で車イスの操作をするとともに、ラケットを持って打たなければいけない。なので、腕を使わずとも移動できるよう、上半身を振り子のように動かして車イスをコントロールする様子もあった。強靭なインナーマッスルが必要だ。

コート内でさながら戦車のように、常に縦横無尽に動き回っているのが印象的だ。

筆者撮影

ちなみに、車いすテニスには「男子」「女子」「クアード」というクラスがあり、「クアード」クラスは重度障害者の選手たちのクラスである。手指にも障害を持つ選手場合、握力が少ない為にテーピングでラケットを完全に固定する場合などがある。充分な筋力がない場合もあるので、強いリターンよりも、取りにくいロブやボレーなどを中心にプレーを構成する戦術が必要になってくる。

大注目の車椅子ジュニア選手、ジュニア選手インタビュー

今回の大会について、ITF車いすテニスジュニアランキングで史上最年少で1位の座に就いた小田 凱人選手と、6歳で車いすテニスを始め、2017年にはジュニア日本ランキング1位に輝いた川合 雄大選手、中学2年生でプロを目指す金子 紗英選手にお話を伺った。

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左:小田 凱人選手、右:川合 雄大選手

小田 凱人選手

今大会ははじめての参加で緊張しましたが、僕としては、障害者・ジュニア・プロの壁はないということを、この大会、そして自分のプレーを通じて伝えたかったです。 実際、ジュニア選手、ニューミックスダブルスでの試合において、ネットを挟んで真剣にラリーができたことから、車イス、ジュニア、プロというのは関係ないということを伝えられたかと思います。 車いすテニスを始めると、いろんな人がサポートし応援してくれることがわかりました。そのおかげで自分はもっと頑張れるし、そうするとより多くの人が応援してくれることが分かりました。車いすテニスというスポーツを通じて、さまざまな方々とつながることができたので、もっと自分のプレーで恩返ししたいと思います。
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川合 雄大選手

この大会を通じて、テニスというスポーツは健常者と車イスのプレイヤーが一緒になって楽しめるスポーツであることを改めて確認できました。 荒井 大輔プロ(車イス)とのシングルスの試合において、負けてはしまいましたが、自分のテニス人生においてかなりいい経験ができました。試合の中でいいプレイ、悪いプレイがありますが、いいプレイを続けられることが大事であることを荒井プロとの試合を通じて感じました。これからのテニスに生かしていきたいと思います。
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金子 紗英選手

今回の大会はプロ選手や車いす選手と交流し、仲を深められるよい大会でした。 松井プロと組んでダブルスを戦いましたが、松井選手から感じたのはガッツでした。ペアとして心強かったとともに、気合が必要だと思わされました。 特に、松井プロの競っている時のメンタル、勝とうという気持ち、気合が入っている様子を見てそこは見習いたいと思いました。 目標としているレフティのクリスティナ・プリスコバ選手を目指して、これからも頑張っていきます。
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一般人も体験できる、車いすテニス体験会

大会中は、一般人にも車いすテニスを体験してもらおうと体験会が行われた。小学生から大人まで参加し、車いすテニスの難しさや面白さを体験していた。

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車いすテニスプロの荒井大輔選手もコーチとして参加。

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車いすテニスを楽しみながらも、車いすで打点に入る難しさをみなさん実感した模様。

車いすテニスを体験された松永 真弥さん

私はテニス歴15年ほどで、普段は草トーナメントに出たり、今年からベテランの公式戦にもでるようになりました。車いすテニスを体験してみてわかったのは、とてもむずかしく、車イスで打点に入ることがなかなかできず、打とうとするもボールに届かないということです。 普段のテニスでは無意識に打点に入れますが、車イスでは、打点に入るためにはどう車イスを動かせばよいかを考えるために、すごく頭を使わないといけないし、実際のその動作がすごく難しかったです。 体験会を通じて、車いすテニスに触れることができて新鮮ですごく楽しかったです。
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難しいといいつつも、しっかり車いすをコントロールしてボールをミートする松永さん

この大会にかける想い

ダイバーシティ・インクルージョンがテーマである、第2回WJPチャレンジテニス。大会の実行委員でもある、各選手に今回の大会について伺った。

車いすプロとして活躍する実行委員 荒井 大輔選手

車いすテニスは注目されつつありますが、テニスの中に車いすテニスというものがある、ということを伝えていきたいですね。テニスの中には、プロ、ジュニア、車いす、さらには義足のテニスもあります。テニスというスポーツの中で、みな平等であることを今回の大会を通じて伝えていければいいなと思います。 体験会ではコーチとして参加しましたが、通常のテニスでも、車いすのテニスでも、テニスを楽しんでもらえる、というのが一番です。僕は好きだから車いすテニスをしていますが、好きなことをやるのに制限はないんだよ、やってみないとどうなるかわからないし、まずはいろんなことにチャレンジしてもらいたい、というつもりで今後もできることは協力していきたいと思います。
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引退後のセカンドキャリアを歩み始める実行委員長 美濃越選手

これまでの長いテニス人生で得られたものを何かしらのかたちで還元できればと思い、実行委員長を務めました。どのような具体的なかたちで世の中に対して、自分が培ったものを還元すればよいか定まっているわけではないですが、これまで選手という立場でしか参加していなかったこのような大会に運営側として関り、大会を運営するということ自体をよく理解して、今後の活動の糧にしていきたいと思いました。
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美濃越選手は健常者だが、第7試合の車いすダブル戦エキシビジョンマッチにも出場し戦った。

発起人であり実行委員である松井 俊英プロのこの大会にかける想い

2020年11月に第一回のWJPチャレンジテニスを発起人として立ち上げました。そのときは、コロナ禍でプロもアマチュアも軒並み大会がキャンセルになり、選手たちの活躍の場がなくなるという状況でした。そこでそのような状況の中、なにか選手たちの活躍の場を設けられないか、と考えて開催しました。 今回はダイバーシティというテーマを掲げて開催しました。 僕自身は、車いす選手に対する隔たりというのは全くなく、ジュニアの時から車いすの選手たちと練習に励んでいました。車いすの選手との試合では勝てないことも多々あり、カテゴリは違いますがライバルとして、どのようにすればその車いす選手に勝てるんだろうか、と考えながら、ときには「車いすのタイヤにボールをぶつけてやろう」などと考えながらともに励んでいました。 僕はそのような環境の中で隔たり無く関わってきましたが、世の中に目を向けると、車いすだけでなく、ジェンダーや、国籍などなどにおいて隔たりがあることを感じます。 ならば、テニスの中でそのような隔たりを無くし、ダイバーシティを推進していければと考え、第2回大会を開催しました。 今回の第2回大会では、僕個人としては、車いす選手のチェアワークの凄さと、メンタルの強さを改めて感じました。 テニスというのはすごくメンタルが大事で、今日のように寒く、風が強くても、普段組まないようなペアとでも臨機応変に対応して平常心を保ってプレーしなければいけない。 そんな僕でもイラつくときがあるのに、車いすの選手はもっとイラつくことがあるはず。チェアワークで車いすを繰りながら、テニスをして、さらに勝負をする、というのはかなりイライラがたまりそうですけど、そこをちゃんと抑えながら勝負をするのは、改めてすごいと感じました。 今後もこの大会を続けたいし、次回以降は一般のひとも参加できるようにし、さらには地方でも開催して盛り上げていければ、と考えています。
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現役最年長世界ATPシングルスランカーの松井 俊英選手のサーブはさすがの迫力

さまざまなひとが分け隔てなくテニスというスポーツを楽しむ、ということを通じて、ダイバーシティ・多様性を推し進めるWJPチャレンジテニス。 ダイバーシティというテーマを抜きにしても、健常者と車いすプレイヤーがペアを組むニューミックスダブルスはスポーツとしてユニークな面白さがあった。 WJPチャレンジテニスの今後の展開が楽しみだ。

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*大会の模様はこちらから

写真/坂本 敦史

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Deeper ライターズ

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