夫婦平等ではない日本の家事・育児事情はどうしてこうなった?
夫婦平等ではない日本の家事・育児事情はどうしてこうなった?

夫婦平等ではない日本の家事・育児事情はどうしてこうなった?

ライター
公開日
Oct 26, 2021

結婚しても共働きを続ける家庭が多い中で、夫婦間の家事・育児負担の不平等に対する不満がよく噴出する。

育児休暇の取得率もアンバランス。

理由の一つには制度の未整備などもあるだろうが、最も強いのは根底に流れている「男は外で働き、女は家を守る」という意識ではないだろうか。「イクメン」などといくら綺麗事を並べても、社会的にはなかなか抜けない意識である。

ところで男女の婚姻について人類の歴史を遡ると、男女が平等に働き、平等に子育てをするという習慣がかつてはあった。

では、一体いつからこうなってしまったのか。

「外で働いているから…」を差し置いても

まず、子育て世代の夫婦で、家事・育児に割いている時間がどの程度違うのかを見てみよう(図1)。

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図1 6歳未満の子どもを持つ夫婦の家事・育児分担 (出所:「男女共同参画白書 令和2年版」内閣府) https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/column/clm_01.html

なお、各国の男性の育児休暇取得率は以下のようになっている(図2)。

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図2 各国の男性の育児休暇取得率 (出所:「男性の育児休業の取得促進に関する施策の国際比較」内閣府資料 より筆者作成) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/meeting/kokufuku/k_4/pdf/ref1.pdf

男性の育児休暇取得率が日本より低いイギリスやフランスと比べてみても、やはり日本では夫の家事・育児時間は短いのではなかろうか。

日本は国際的に労働時間が長い、ということも事情かもしれないが、それにしても夫の関与が少なすぎるように感じられる。

原始人類は働くことも男女平等だった

さてここで、本稿の中心である、「かつての人間と婚姻、育児家事分担」という話題を紹介していこうと思う。

現代社会では、世界的には一夫一婦だけでなく、一夫多妻の習慣を持つ場所も地球上には存在する。

筆者は大学生の時、「日本人はなぜ一夫一婦なのか」という卒業論文を書いた。世には不埒者が存外多い。その様子を不思議に思っていたのである。これは動物として必要な行為なのか、だとしたら生物学的にどんなメリットを持つのか、というきっかけだ。

それはさておき、近年は否定する声が多いものの、原始の人類は「乱婚」であったという説がある。「多夫多妻」と言った方がよいかもしれない。

これは、狩猟採集という生活形態によるものである。男女の身体には物理的な性差があり、男性は狩りに出かける。

こう言うと、男性の狩りが生きる術の全部だと思ってしまうかもしれないが、実はそうではないのだ。

というのは、大きな獲物は毎日手に入るわけではない。そして、獲物が手に入らない期間は、女性が集める果実や木の実、イモ類などで栄養を補うのである。つまり女性の働きがなければ、男性も「食えない」時代だったのである。

少なくともこの世界では男女は平等であったと言えるだろう。筆者が当時調査した各種文献にもそのような記述は多かった。

事情が変わってくるのは農耕時代になってからであるとされる。これには諸説ある。定住により富の蓄積が可能になったため、相続で揉めないように長男を優先するようになったという説や、近年では「農耕のために定住するようになった後、集団で暮らす人々のなかで性感染症が広まった」ために一夫一婦に移行したという説が出てきている*1。

いずれにせよその後、人々は国内外で侵略戦争を繰り返すことになる。封建制度以降、女性に求められるのは兵力でなく出産、となっていったのは想像に難いことではないだろう。

とはいえ、二度の大戦の際には海外でも女性が動員され、工場などで過重労働にも加わっている。まさに「働きながらワンオペ育児」という、現代に多い形である。

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一夫一婦の鳥類の場合

ところで、現代はどうだろうか。封建制度でも戦時中でもない。産業は構造化され、男女の物理的体格差・体質差も影響しにくい職業が増えている。

むしろ、どちらかに一定以上の収入がない限り、夫婦でともに稼がなければ「食えない」、「じゅうぶんな子育てができない」という意味では、原始時代への逆戻りである。

興味深いことに、一夫一婦が基本の鳥類は産卵後、卵を温めるのはメスでなくてもよく、よって卵を温める仕事やヒナにえさをやる仕事は完全に雄雌平等で担うことができるという。オスも子育てに参加している方が生存率が上がったために、オスの育児が定着したとする説もある*2。

「赤ちゃんは母乳が必要だから」「子どもって結局ママがいいんでしょ?」と、やんわりと最後は母親に押しつけてしまおうという逃げ腰の男性は少なくない。

しかし、現代はミルクもあれば母乳の保存も可能な時代である。男性だって授乳ができるのだ。よってそれらはなんの言い訳にもならない。

また、仕事や家事と違って育児は24時間体制である。

筆者の会社員時代、2児のママとして育休明け間もない後輩と出張に行ったとき、和室ではあったがふすまで部屋を仕切ることができたので、離れて寝た。そのときの彼女の言葉がこれだ。

「ひとりの空間で、しかも誰にも起こされずに眠れるのってどれくらいぶりか覚えてませんよ!」

その言葉が彼女の生活の全てを言い表している。

ひところ、「女性の家事は時給いくら?」という議論があったが、会社で一定時間働くのと、24時間体制で育児をするのとでは全く次元の違うことなのである。

また、京都大学の元総長である山極寿一氏いわく、「そもそも人間の子どもは共同保育されるように生まれついている」とのことだ*3。

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育休を取ろうと取るまいと…

さて、ここまで原始人類や他の生き物などを見てきたが、最後に同じ人間である他国の現在、とくに世界一のジェンダー平等国と言われるアイスランドについて紹介したい。

世界経済フォーラムが発表した2020年のジェンダー・ギャップ指数(GGI=上位ほど男女平等)ではアイスランドが1位、日本は121位といった具合で、分野ごとで比較すると下のようになっている(図3)。

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図3 ジェンダーギャップ指数各分野の比較 (出所:「共同参画」内閣府) http://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/202003/202003_07.html

労働参加率は経済の分野に入る。

そして、因果関係は明確ではないが、リーマン・ショック時にはこのようなことが起きている(図4)。クレディ・スイスが当時の企業パフォーマンスについて分析したものである。

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図4 リーマン・ショック時の企業パフォーマンス (出所:「女性リーダー育成のためのモデルプログラム」内閣府) https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/modelprogram_h30/2/kenkyu_1-1.pdf p5

青線が女性取締役のいない企業、赤線が女性取締役のいる企業の「株式パフォーマンス(=その企業に投資した場合の収益の高さ)」を示している。

筆者は女性が男性より優秀である、と言いたいわけではない。

ただ、男女比で企業のパフォーマンスがそこまで変わるのか?という点を問題視したいだけである。そしてここではむしろ、女性の存在と株価パフォーマンスに相関関係が見られる。

であれば、人間という生き物の特性に見合った育児の方法があってしかるべきと思う。

生き物としての生存戦略に反する必要はないし、せっかくの文明を利用しない手もない。

むしろ、男女の共働きによって支えられている現代にあっては、協業しない男性の生存戦略は危ういかもしれない。

さて、事はどうあれ、筆者がひとつだけ揺るぎない事実として感じていることがある。

育児休暇を取ろうと取るまいと、結局デキる社員はデキる。先述の、共に出張した後輩がそうだったし、そのような女性の同僚や先輩、後輩を筆者は多数見てきた。

そして、デキない社員はブランクに関係なくデキない。

この事実を無視して、男はどうだとか女はどうだとか言っているのはいかがなものか、と筆者は時折首をかしげている。

参考資料

*1

「【進化】性感染症がヒトの一夫一婦制を助長した可能性」nature communications 2016年

*2

「狩猟採集の時代から『男女支え合う』がヒトの生存戦略」日経xwoman 2021年7月5日

*3

「都市と野生の思考」鷲田清一・山極寿一/インターナショナル出版 p68、76

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