企業がすべき人権への3つの配慮
企業がすべき人権への3つの配慮

企業がすべき人権への3つの配慮

ビジネスにおける人権への配慮に対する注目が加速している。

2020年10月「ビジネスと人権」に関する行動計画NAP(National Action Plan)が日本においても策定された。近年のESG投資の盛り上がりなどからも、企業の人権対応が投資家から求められていることがわかる。

また、企業における人権への配慮は、企業価値と国際競争力の向上、SDGs達成への貢献につながると指南されている。

大手企業にとっては株式市場からの評価、中小企業にとっては取引関係に影響するようになり、経営戦略として取り組まざるをえない状況になりつつある。

この「ビジネスと人権」について日本企業に求められる具体的対応について考えていきたい。

Photo by Agence Olloweb on Unsplash
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ビジネスと人権に関する行動計画NAP

世界の人権の歴史は、1948年に採択された「世界人権宣言」が国際社会における人権基準となったことから始まっている。1990年代以降、ビジネスにおいても人権的視点を取り入れることが求められるようになった。

2000年、国連グローバル・コンパクト 4つの分野(人権、労働、環境、腐敗防止)に関しての10原則が発足し、2011年国連人権理事会で承認された国連事務総長特別代表ジョン・ラギー氏による「ビジネスと人権に関する指導原則(UN Guiding Principles on Business and Human Rights)が作成された。

この指導原則により、企業が人権課題の報告を行うための包括的なガイダンスが作成された。

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出典:「ビジネスと人権に関する調査研究」報告書 今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応 詳細版【PDF】

また、この指導原則を受けて、各国は指導原則の普及と実施に関する行動計画(NAP)の作成が奨励されており、欧米諸国においては2013年にイギリスが世界で初めてNAPを策定したのに続き、イタリア、オランダ、ノルウェー、アメリカ、ドイツ、フランスなどが続いて策定した。

日本では、2016年に政府がNAP策定を表明し、2020年10月に公表されるに至っている。

日本のNAPにおいては、ビジネスと人権に関して政府が取り組む各種施策、企業がその活動における人権への影響の特定、予防・軽減、対処、情報共有を行い、人権デュー・ディリジェンスを導入することへの期待が書かれている。

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出典:「ビジネスと人権」に関する行動計画(概要)100104258.pdf (mofa.go.jp)

人権デュー・ディリジェンスとは日本版NAPの概要にもある通り、人権への影響を特定、予防、軽減、対処、情報共有を行うことである。

具体的には、人権に関する方針の策定、企業活動が人権に及ぼす影響の評価、是正措置、パフォーマンスの評価や開示などが含まれる。

SDGsの2030アジェンダの前文には「全ての人々の人権を実現し、ジェンダー平等と全ての女性女児の能力強化を達成することを目指す」と記載されていることからも、SDGsは、そのすべての目標が人権の尊重を包含しており、人権はSDGs全体を支えるフレームワークとなっている。

また、人権はESG投資における社会(Society)の重要な要素である。

企業にとって、人権への対応はCSR(企業の社会的責任)の一環としてではなく、企業価値の維持向上のために取り組まなくてはならない課題となってきている。

日本の法令順守に加えて、国際的な人権基準に基づいて、リスクの発見と対応を行っていくことが重要であるといえる。

Photo by Christian Lue on Unsplash
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企業の人権への取り組み

日本版NAPにより企業へ求められる人権への取り組みとしては、以下の3つのポイントが挙げられる。

1.方針によるコミットメント 「人権ポリシー」や「ダイバーシティ方針」の策定

2.人権デュー・ディリジェンスの実施 人権への影響評価、教育や研修、社内制度の整備等、サプライチェーンの管理など

3.救済措置 実際に人権侵害が起こった際の苦情処理や相談窓口の設置

法務省では、NAPを受けて「今企業に求められる『ビジネスと人権』への対応」を作成し、その中でビジネスにおける人権リスクを25種類挙げている。

どれも重要な事項だと感じるのは、世界人権宣言の1条に「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもつて行動しなければならない。」とある通り、人間の理性と良心に刺さるからではないだろうか?

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出典:「ビジネスと人権に関する調査研究」報告書 今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応 詳細版【PDF】

具体的に企業で取り組むために

人権とは、人間が人間らしく尊厳を持って幸せに生きる権利のことであるが、どの人権にも不当な理由による「苦しみ」の背景がある。

筆者は、社会保険労務士という仕事をしており、ハラスメント防止やダイバーシティ&インクルージョンの推進を行っている。

その中で、最も大切なことは、個人を尊重し、大切にすることであり、まさしく人権を遵守することそのものであると感じている。

Photo by Sharon McCutcheon on Unsplash
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パワハラ防止法が2022年4月から中小企業においても義務化されるが、ハラスメントに繋がるNGワードを言わないよう、1つずつ潰していくことが、リアルなハラスメント対策に繋がるとは考えにくい。

それよりも人権意識を高く持つ努力をし、個人と多様性を尊重し、対話をしながら信頼関係を築くことの方が、シンプルかつ結果的に生産性の向上にも繋がるのではないだろうか?

では、先に述べた企業に求められる取り組みの3つのポイントをハラスメント対策やダイバーシティ施策と絡めてみていきたい。

1.方針によるコミットメント

「人権ポリシー」や「ダイバーシティ方針」の策定

企業理念に加えて、例えばLGBTQ+への取り組みを行っていることをWeb等で表明している企業がある。これによりLGBTQ+当事者だけでなく、全てのジェンダーに対して平等であることが読み取れ、性別にかかわりなく活躍できる会社であることを伝えることにも繋がっている。 企業のLGBT施策を評価する指標 『work with Pride』に参加し、認定マークを取得することもよいだろう。
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work with Prideとは、『企業などの団体において、LGBTQ 、すなわちレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーなどの性的マイノリティに関するダイバーシティ・マネジメントの促進と定着を支援する任意団体です。』(Webより抜粋)

2.人権デュー・ディリジェンスの実施

人権への影響評価、教育や研修、社内制度の整備等、サプライチェーンの管理など

ハラスメント対策においても、教育や啓発、制度の整備、また社内だけでなく社外の取引先との間でもハラスメント対策を講じることが求められている。

3.救済措置

実際に人権侵害が起こった際の苦情処理や相談窓口の設置

いつでも相談できる相談窓口を設置することは、ハラスメント対策でも求められている。窓口の担当については、社内で担当者を置く方法のほか、社労士や弁護士などの外部機関に委託するケースもある。

このように、企業に求められる人権への取り組みとハラスメント対策やダイバーシティ施策は多くの部分が重なっていると言えるだろう。2020年6月からパワハラ防止法が施行され、中小企業においても2022年4月より義務化される。

今まで述べてきた通り、人権への配慮が、経営戦略として取り組まざるを得ない状況になりつつある。また日本の法律的に求められるハラスメント対策やダイバーシティ施策と重なる部分が多く、しっかりと取り組むことで働きやすい環境、そして生産性の向上にもつながる。

日本国内の労働法を守りつつ、国際的に求められる基準を含めて、企業における人権方針・対応策を検討していくことが、国際的なビジネスチャンスの拡大になるのではないだろうか?

Photo by Joel Mott on Unsplash
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参考サイト

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