コロナ禍で得た「どこでもドア」とサードプレイス論 (2)
コロナ禍で得た「どこでもドア」とサードプレイス論 (2)

コロナ禍で得た「どこでもドア」とサードプレイス論 (2)

前回は新型コロナウィルスの影響で、家にこもりきりの状況が続く中で、私に起きたポジティブな変化について「どこでもドア」とサードプレイスという二つのキーワードで考察を試みる旨を書いた。今回はその中編として、まずは生活拠点にあたるファーストプレイス、つまり「家」について考えてみる。

オルバーグのサードプレイス論によれば、ファーストプレイスとは生活拠点、つまり家庭のことを指す。まず2020年以前、いわゆるビフォアコロナにおける私のファーストプレイスを記述し、その後2020年以降のアフターコロナにおいて、それがどう変化したのかを紹介する。

「最低限の寝食の場」としてのファーストプレイス

私は2017年に大学を卒業し、新卒入社で今の会社に就職している。入社後は原則オフィスに出勤をしており10:00から19:00ごろまで働いて、終業後にパートナーのいる家に帰宅する、というのが大体の毎日であった。おおよそ会社への通勤が日課の人と同じスケジュールだろうと思う。通勤に片道1時間強かかっていたため、朝8時くらいには家を出て、残業やイベントがあれば22時ごろに帰宅するという生活である。

image

土日に関しても大きくは変わらず、ほとんど家にいない日々を送っていた。当時は学生時代にお世話になった団体に卒業生として参加していたし、2020年4月の入学が決まっていた大学院へ伺っては研究の相談をするという日々であった。要するにほとんど家にいなかったのだ。

今振り返ると、当時のファーストプレイスは「最低限の寝食の場」と化していた。

当時はそこまで感じていなかったものの、パートナーと過ごす時間や自分の家でゆっくりする時間は、今から振り返ればかなり少なく、とにかく予定に追われた日々を過ごしていた。そんな中でファーストプレイスは、夜遅くに帰ってきて寝て、朝起きて朝食を食べて、家を出るという一連の流れをするための、「最低限の寝食の場」だった。

24時間を家で過ごす日々へ

そんな家にいない日々を送っていた私だが、アフターコロナでは、多くの方と同じように、ほとんど24時間を家の中で過ごすことになった。これまではほとんど家におらず、寝食の場と認識していた場所に24時間いることになるということは、多くの人が経験した通り、自分にとっても大きな変化であった。

いくつか実際に起きた変化を書いておきたい。

  • 仕事が在宅勤務になり、家で仕事をするのが標準になった
  • 卒業生として参加していた団体は予定していたイベントが中止となり活動が減少した
  • 研究室への訪問は制限されたために大学に行くこともめっきりなくなった

補足として、大学に関して言えば、実は入学してからはや1年半経過したがほとんど図書館くらいにしか行ったことがなく、諸々の事情があり入学後に指導教員が変わったために、ゼミ生含め1度しか会ったことがない。先日健康診断があり、大学に行く機会があったのだが、建物の名前がわからないくらいには大学のことを何も知らないまま1年半が経過している。

image

さてこうした変化の結果何が起きたか。端的に言えば、毎日に変化がなくなった。

朝起きて、身支度を整えたらパソコンの前に座る。仕事をして、パートナーと会話をしたりしたら、昼休みに入り、二人で昼食を食べる。少し休んでからもう一度パソコンの前に座り仕事をして、夕方に仕事が終わったらまた二人で夕食を食べる。夕食後は動画をみたり、本を読んだり、勉強をしたり、場合によっては残りの仕事を片付ける。夜になったら二人で部屋を簡単に片付け、寝る。この繰り返しである。

このように書くと、あまりにも代わり映えのない生活におかしくなりそうだと思うだろうか。

多くの人が自粛生活が辛い理由の一つはそこにあるだろう。

変化のないことでモニタリングと改善が可能になる

しかし私にとってこの変化はとてもポジティブに働いた。

ビフォアコロナでは、毎日違う予定があり、別の場所に行き、違う時間に帰ってくる、変数の多い日々を送ったいた。しかしアフターコロナでは、物理的に私がいる場所はファーストプレイスである生活拠点だ。予定は毎日多少違いはあるが、それもある程度ルールを設ければ統制できる。変数の少ない日々を送れる。

1日の中で変数が減少したことで、結果私は自分の生活をモニタリングできるようになった。睡眠時間がどれくらいか、歩数はどれくらいか、運動はしたか、どれくらい集中時間をとったか、仕事は何時から始めたか、本を読んだか、娯楽の時間がとれたかなど。これらの要素がある程度統制できるようになると、工夫の余地が出てくる。

例えば、ビフォアコロナでは私はどちらかと言えば夜型で、2時ごろ寝て、8時に起きる生活を送っていた。それは夜のほうが集中力が高く、朝は眠気が強いと思っていたからだ。しかし現在は、23時に寝て6時に起き、8時には仕事を始める生活を送っている。基本的に平日も土日も関係なくこのルーティンで、8時にはパソコンの前に座る。すると、その時間に座れたかどうかで、自分の体調やメンタルを計測できるようになる。このモニタリングと異常検知、そしてそこからの調整や改善が自分の性にあっていたのだ。

image

全ての活動のベースラインとしてのファーストプレイス

このように自分の生活をモニタリングしながら、全ての活動をファーストプレイスから行うようになった結果、アフターコロナにおけるファーストプレイスは「全ての活動のベースライン」になったといえる。このベースラインを整えていくことで、自分の生活をモニタリング・コントロールできるような感覚があり、この変化はとても心地の良いものであった。

ここまで見てきたように、私にとってファーストプレイスはコロナ前後で大きく変わった場所であった。3つの場の中で、最も大きな変化があった場所だったと言える。ビフォアコロナでは最低限の寝食の場として機能していたものが、アフターコロナでは全ての活動のベースラインとなった。

そしてその結果、ベースラインを日々改善しながら自分の体調をモニタリングできるようになり、異常検知と小さな改善の積み重ねが実現した。毎日が同じように続くということが、多くの人にとっては辛いのかもしれないが、自分にとってはむしろ心地よい空間が生まれたと捉えられた。

この変化を一言でいうならばファーストプレイスは再構成された、と捉えられるだろう。ファーストプレイスの再構成により、1日の過ごし方が大きく変わった。そしてこれまでは生活のごく一部であったファーストプレイスは、ここをベースラインとして、その上に第二、第三の場が乗るような非常に重要な役割を担うようになった。

おわりに

今回は第二回ということで、ファーストプレイスの変化を見てきた。次はセカンドプレイス、つまり生産拠点について、そしてサードプレイスについても見ていく。

image

ミテモからのお知らせ

ミテモからのお知らせ

執筆者

Deeper ライターズ

人気記事

すべての記事

新着記事

すべての記事

関連記事

すべての記事