日本で奴隷!? 米「人身取引報告書」で日本の外国人技能実習制度を問題視
日本で奴隷!? 米「人身取引報告書」で日本の外国人技能実習制度を問題視

日本で奴隷!? 米「人身取引報告書」で日本の外国人技能実習制度を問題視

ライター
公開日
Jul 21, 2021
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NHK報道記者を経て、現在4歳の女の子を育てながらフリーライターとして活動する私が、女性活躍(特に育児中の女性の社会復帰)や子育て、教育についてのニュースを紹介していきます。 今回取り上げるのは、現代社会における奴隷の実態についてです。米国務省発表の人身取引に関する年次報告書では、日本は昨年に続き二番目のランク。労働移民が強制労働させられているとの指摘を受けています。日本において奴隷は決して他人事ではなく、現実に起きている問題なのです。

米国務省は2021年7月、世界各国の人身取引に関する年次報告書を発表した。日本については、「外国人技能実習制度が国内外の事業者に悪用され、日本で働く労働移民の強制労働につながっている」と指摘。日本政府の対応は、「最低基準を満たしていない」として、4段階評価で上から2番目のランクに据え置いた。

強制労働や人身取引については、2016年にもオーストラリアの国際人権NGOウォーク・フリー財団から、「日本では29万人が現代奴隷制下にある」と指摘されている。

強制労働や人身売買、現代奴隷制・・・普段聞き慣れない言葉ばかりで、「自分には関係ない」と感じるかもしれない。しかし、いま私たちが住む日本で、現実に起きていることなのだ。

世界の現代奴隷制の現状

Modern Slavery-The Factによると、世界中でおよそ4,030万もの人が、現代奴隷制の被害者だとされている。(2016年時点)現代奴隷制とは、労働搾取や強制結婚、人身取引のことを指す。4,030万人のうち、強制労働者は2,490万人で、残る1,540万人は強制結婚状態で暮らす人々だ。強制労働者のうち、1,600万人がグローバルサプライチェーンにおいて働いているという。

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グローバルサプライチェーン 商品が消費者に届くまでの生産・流通プロセスの仕組みを、国内だけでなく海外拠点も含めて実施すること

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出典:Infographic Journal

ということは、私たちが普段手にする日用品や食べ物の一部も、強制労働の下で作られている可能性がある。現代奴隷制は、私たちの生活にも密接に関わっていることなのだ。

(参考:国際労働機関(ILO)・ウォーク・フリー財団「現代奴隷制の世界推計:強制労働と強制結婚」

日本の外国人技能実習制度にみる、現代奴隷制の現状

日本における現代奴隷制の現状は、米国の人身取引に関する報告書で指摘された通り、主に外国人技能実習制度に問題がある。

外国人技能実習制度は元々、外国人に日本の技術や技能をOJTで身に付けてもらい、母国に持ち帰って活用してもらうことで国際貢献に繋げるという制度だ。しかし現状は、「低賃金で労働力を補充する」という、国際貢献とかけ離れた目的での運用が横行している。

実習生を保護するため、2016年に「外国人の技能実習の適正な実施および技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が成立したが、これについては当時の日弁連の会長が「制度の構造的な問題を残したまま技能実習制度を存続・拡大させることにはなお反対」とコメントしている。実際に外国人技能実習制度は、どのように運用されているのだろうか。

Photo by Atsadawut Chaiseeha on Unsplash
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失踪した外国人技能実習生を対象に法務省が作った聴取表を、野党が2018年に分析したところ、67%(1,939人)もの実習生が最低賃金未満で働いていたことが分かった。さらに、10人に1人の実習生が、「過労死ライン」とされる月80時間以上の残業していたことも明らかになった。

最近の実習生の賃金については、厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和元年)を見るとよく分かる。実習生の平均賃金156,900円(平均年齢26.7歳)に対し、同年代の一般労働者の平均賃金は、251,600円となっている。正社員以外の雇用形態でも、25~29歳の賃金平均は198,900円と、実習生よりも高い。法律では、実習生にも日本人と同等以上の賃金を支払うよう定められているのに、現実は法律に則った賃金水準ではない。

さらには、実習生の妊娠をめぐる問題も各地で起きている。2020年、ベトナム人国籍の実習生の女性が妊娠したが、妊娠を理由に強制帰国させられるのを恐れ、自宅で一人出産した。死産だったため、子どもの遺体と自室で過ごしていたところ、死体遺棄容疑で逮捕・起訴されるという事案も起きている。

外国人技能実習生も、日本人と同様に労働基準法が適用される。よって、妊娠・出産しても在留資格は失わないし、妊娠・出産を理由とする実習生への不当な扱いも禁止されている。しかし、「妊娠したことを会社に伝えたら解雇された」という実習生や、「妊娠が分かったら解雇されるかもしれない」と考える実習生がいるのが現実だ。

日本の外国人技能実習制度については、2018年8月にも国連人種差別撤廃委員会(CERD)から、「政府の監督は不十分」と指摘を受けた。さらに2020年にも、「技能実習法に基づく実地調査や監督が不十分」との指摘を受けている。現代奴隷制は対岸の火事ではない。日本で、今まさに横行する問題なのだ。

Photo by Louie Martinez on Unsplash
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英国現代奴隷法と、市民社会による監視の影響力

現代奴隷制を防止する法律として、2015年に英国で「現代奴隷法」が制定された。この法律は、サプライチェーン上における強制労働や人身取引など、人権侵害の有無やリスクを企業にチェックさせ、さらに根絶するための手順を「奴隷と人身取引に関する声明」として報告を求めるものだ。

対象は英国で活動する企業で、世界での売上高が3,600万ポンドを超える企業となる。現代奴隷の撲滅を目的としたTISC reportのサイトによると、英国内外の18,340社が対象となっている。(2021年7月15日現在)

「奴隷と人身取引に関する声明」は、企業ウェブサイトのトップページに目立つようにリンクを貼り、公開しなければならない。日本企業においては、ファーストリテイリングや良品計画など多くの企業が対象となっており、ウェブサイトを見ると方針や声明を公開していることが分かる。

(参考:ファーストリテイリング「社会への宣言」・良品計画「サプライチェーンの人権・労働環境の尊重」)

Photo by Agto Nugroho on Unsplash
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声明には、以下6つの内容を明記しなければならない。

  1. 組織の構造と事業内容およびサプライチェーン
  2. 奴隷と人身取引に関連する方針
  3. 事業とサプライチェーンにおける人権デューデリジェンスのプロセス
  4. 事業とサプライチェーンのどこに奴隷と人身取引のリスクがあるか、またリスク評価や管理のためのステップ
  5. 奴隷と人身取引が起こっていないことを確認する方法の有効性と、その行動のパフォーマンス評価指標による測定
  6. 奴隷と人身取引に関する研修のスタッフへの提供

企業が法令に違反した場合は、無制限の罰金が科せられることになっている。だが実際のところ、英国政府は、対象企業が法令の要求事項を満たしているかどうかは確認しない。現代奴隷法は、企業に罰則を与えて遵守させるのではなく、英国市民社会やNGO、大学研究者の厳しい監視の目を利用して、企業に透明性を持たせようとしているのだ。これは、市民社会が現代奴隷制に関心を持ち、企業の声明を精査できるからこそ成り立つ仕組みだろう。

Photo by Malu de Wit on Unsplash
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現代奴隷制を他人事と思わず、まずは現状を知ることが大切

日本で暮らしていると、「奴隷や人身売買、強制労働なんて、海のはるか向こうの話だ」と感じる人も多いだろう。でも実際は、私たちが普段手にしている商品の向こうに、現代奴隷制の下に働く人々がいる可能性がある。しかも、日本の外国人技能実習制度は、国際組織や他国から「強制労働や人権侵害の恐れがある」と指摘を受けるほど、様々な問題を抱えている。私たちの近くにも、現代奴隷制の被害者がいるということだ。

私たちにできることは、英国市民社会に見るように、企業を監視することではないだろうか。そのためにはまず、現代奴隷制を他人事だと思わないこと、そして日本の現状を知ることが重要だ。

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