トヨタはなぜサステナビリティボンドを通じた調達を行うのか(前編)
トヨタはなぜサステナビリティボンドを通じた調達を行うのか(前編)

トヨタはなぜサステナビリティボンドを通じた調達を行うのか(前編)

今年の3月、トヨタ自動車(以下、トヨタ)は、SDGs貢献に資するプロジェクトに使うための資金に関して、サスティナビリティボンドを含む「Woven Planet債(ウーブンプラネット債)」の発行を通じて5,000億円を調達すると発表をしました(*1)。

SDGsが注目される昨今、ファイナンスの形態にもサステナビリティボンドを含め、新たなものが多数生まれてきています。

今回はトヨタのウーブンプラネット債を通じた事例を題材に、SDGsに関するファイナンスやESG投資の最近の潮流について前半と後半の2回にわけてみていきます。

トヨタのウーブン・プラネット・グループとは

今回トヨタがウーブンプラネット債の調達を通じて行う事業はウーブン・プラネット・グループと関係しています。ウーブン・プラネット・グループはトヨタの子会社で、「テクノロジーを洗練させ、トップクラスの安全性を実現したモビリティを世界中の人々に届ける」をミッションとしています。

ウーブン・プラネット・グループでは、図表1のようにウーブン・プラネット・ホールディングスが親会社となり、子会社となるウーブンコアが自動運転技術の開発の実装、ウーブンアルファがウーブンシティや開発プラットフォームなど非製造業の事業、そしてウーブンキャピタルが10年で8億ドルもの関連分野への投資やインキュベーションを担当することになっています。

図表1 ウーブン・プラネット・グループ全体像

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出所:ウーブン・プラネット・グループHPより作成

ウーブン・プラネット・グループの社名にある「Woven」とは「織り込む」という意味で、その由来はトヨタの創業者である豊田佐吉が自動織機を発明した時の原動力である「母親の仕事を楽にしたい」という想いから来ています。加えて、自動運転やモビリティサービスに必要となる「道」を「織り込む」という意味も含まれています。

もう一つの「Planet」には、地球に住む人が未来に貢献することで、次の世代に美しい故郷を残したいという想いも込められています(*2)。

ウーブン・プラネット・グループは、元はトヨタの自動運転技術・システム開発やモビリティビジネスを担う「TRI-AD」(トヨタ・リサーチ・インスティチュート・アドバンスト・デベロップメント)が前身となっています。

TRI-ADは、トヨタが90%、アイシンとデンソーがそれぞれ5%ずつ出資をし、2018年3月に設立されたジョイントベンチャー(合弁会社)でした。TRI-ADは最新の高度運転支援技術などを開発することに加え、社内公用語は英語にし、仕事の進め方や社内のルールを新たに設計することで、これまでのトヨタとは違った次世代の開発体制をとりました。そうすることで、トヨタグループの知能化人材を育成するといった役割も担っていたのです。

このTRI-ADは、2021年1月に上述したウーブン・プラネット・ホールディングス株式会社(以下、「ウーブン・プラネット」)という持株会社の体制に移行をしました。

ウーブン・プラネット・ホールディングスは、今年の4月には米国配車サービス会社Lyft, Incの自動運転部門であるLevel5を約5.5億ドル(日本円にした約600億円)で買収することを合意したりと、次々と新たな動きを仕掛けています(*3)。

サステナビリティボンドであるウーブンプラネット債

上述したとおり、トヨタは今般ウーブンプラネット債を発行することを発表しました。ウーブンプラネット債は、社会課題解決への貢献に資するプロジェクトに支出するために発行される債券の総称としています。このウーブンプラネット債の発行を通じて、トヨタのウーブンプラネットの取り組みの理解を世界中の多くの方にしてもらうことをトヨタは考えています。

では、トヨタが取り組む「社会課題解決への貢献に資するプロジェクト」とはいったどういったものでしょうか。以下では、「サステナビリティボンド」の観点から考察を進めます。

サステナビリティボンドとは、一般的に言われるSDGs債といわれる一種です(*4)。SDGs債は、国際資本市場協会(ICMA)によるグリーンボンド原則、ソーシャルボンド原則、サステナビリティボンド・ガイドラインなどの国際的なスタンダードとして認められる原則や、個別の国や地域で策定された原則に沿った債券を総称したものです。

このSDGs債の中でも、最近発行額が増えているのが、「グリーンボンド」、「ソーシャルボンド」、そして「サステナビリティボンド」の3つです。それぞれ似ていますが、定義は違います(図表2)。

図表2 SDGs債の種別

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出所:金融庁ソーシャルボンド検討会議 資料を参考に作成 https://www.fsa.go.jp/singi/social_bond/siryou/20210310/02.pdf

また、図表3にあるようにこれらSDGs債はいずれも近年世界レベルで発行額を急激に伸ばしています。

図表3 SDGs債発行残高推移

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出所:金融庁ソーシャルボンド検討会議及び日本証券業協会の資料を参考に作成 https://www.fsa.go.jp/singi/social_bond/siryou/20210310/02.pdf

このうち、今回トヨタが発行するサステナビリティボンドは、グリーンプロジェクト及びソーシャルプロジェクトへの双方への投資という点で、ソーシャルボンドとグリーンボンドの両方の性質を持つものとなっています。

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出所:金融庁ソーシャルボンド検討会議を参考に作成 https://www.fsa.go.jp/singi/social_bond/siryou/20210310/02.pdf

今回取り上げているウーブンプラネット債の一部はサステナビリティボンドとして「Woven Planet債フレームワーク(サステナビリティフレームワーク)」が設定されています。

そして、このWoven Planet債フレームワークは、国際資本市場協会(ICMA)が定めるグリーンボンド原則2018、ソーシャルボンド原則2020、そしてサステナビリティボンド・ガイドラインに基づき策定されています。

つまり、ウーブンプラネット債の一部は、サステナビリティボンドの定義の通り、新規又は既存の適格なグリーンプロジェクト及びソーシャルプロジェクト双方への初期投資又はリファイナンスのみに充当される債券なのです。

ウーブンプラネット債の資金使途は何なのか

では、サステナビリティボンドであるウーブンプラネット債は具体的にはどういったプロジェクトに資金が使用される予定なのでしょうか。

トヨタが発行する「Woven Palnet債(ウーブン・プラネット債)フレームワーク」によれば、以下の適格基準を1つ以上満たす事業に充当されることになっています(一部抜粋)。

図表4 ウーブンプラネット債資金使途

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出所:Woven Palnet債(ウーブン・プラネット債)フレームワークより作成

すなわち、ウーブンプラネット債を通じて調達した資金は上記のプロジェクトに使うことが限定されるということです。また、これらについては外部評価として、セカンドバーティーオピニオンやコンプライアンスレビューが外部機関によって行われることになっています。

なお、トヨタのリリースを詳しく見ると今回ウーブンプラネット債として調達する5,000億円のうち、サステナビリティボンドは外貨建社債及び機関投資家向け円建て社債4,000億円のみで、残りの個人投資家向け円建て社債1,000億円は、トヨタのSDGsにかかる幅広い取り組みに使われる予定なものの、厳密にはサステナビリティボンドではありません。

個人の方もウーブンプラネット債は購入可能ですが、仮に買ったとしても個人向けの円建て社債はサステナビリティボンドではない点、注意が必要です。

図表5 ウーブンプラネット債内訳

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出所:「トヨタ、『Woven Planet債』の発行計画を発表-トヨタフィロソフィーに基づき、SDGsの取り組みを推進-」より作成 https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/34860859.html

今回はトヨタが発行することを発表したウーブンプラネット債を題材に、SDGs債の類形やウーブンプラネット債の中身について見てきました。次回の後編では、SDGs債とESG投資の違いや企業がESG関連に取り組む意義についてみていきましょう。

(注)

*1,2 トヨタ、「Woven Planet債」の発行計画を発表-トヨタフィロソフィーに基づき、SDGsの取り組みを推進-

*3 トヨタ子会社、ウーブン・プラネット・ホールディングス、米国 Lyft(リフト)の自動運転部門Level 5(レベル5)の買収を発表

*4 日本証券業協会では調達資金がSDGsに貢献する事業に充当されるものとして、グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンドなどの債券を 「SDGs債」と呼んでいます。

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