みんな自分を高く見積もりすぎてる
みんな自分を高く見積もりすぎてる

みんな自分を高く見積もりすぎてる

仮面屋おもてでは法人向けにオーダーメイドの仮面製作を引き受けておりまして、これがおそらく皆様が想像する数の10倍くらいの問い合わせがあります。世の中マジでどうなってるんだ。もちろん弊店の事ですから、8割がたお断りしております。弊店は来た仕事を断るムーブに関しては他の追随を許しません。お断りに通常業務の趣さえある。

そもそも、人間一人ができる仕事量なんて高が知れているので、たくさん頼まれてもできる範囲には限りがあります。それならできるだけ楽しい仕事をした方がいいに決まっているので、必然的に面倒な仕事は引き受けないことになりますよね。

お断りする理由はいろいろありますが、今回は、弊店でお仕事お断りムーブを発生させるコマンドをいくつかご紹介します。ちなみに最強コマンド「予算がない」だけは除外しました。そりゃ無理だ。

時間がない

ほぼ半数以上の案件が「時間がない」です。みんな弱パンチくらいの頻度で繰り出してきます。弊店では、通常納期で約3ヶ月ほど製作期間をいただいております。特急料金でもやらなくはないのですが基本的に面倒くさいのであまり引き受けたくありません。割と実はかなり頻繁に「使いたいの来週なんですけど。、」とか言われがちですが、そういった方は完全にうちのお客さんではないので他へ行っていただきます。無理しない。

この3ヶ月という期間には、当然私がお茶をしたり突然思い立ってハイキングに出かけたり、一夏の思い出づくりに勤しんだりする時間も含まれているので、かなり真っ当で妥当な見積もりだと考えています。そこに加え実際のデザインを打ち合わせたり、製作に手を動かしたりすることを考えると、場合によってはそれ以上かかることも当然あります。

ところで私も仕事を頼む方のアレをすることは頻繁にありますが、世の中のプロフェッショナルたちは本当に仕事が早いですよね。早いというか、早すぎると思います。

見積もりを頼んだら翌日に来るとか、聞いてもいないのに「○日までにできます!」とか言われたりして、私からみると常軌を逸しているとしか思えません。この感覚はいったいどこからくるんでしょうね。早い方がいいという価値観は一体何なんでしょうか。

世の中には遅い方がいいこともいっぱいあります。夏休みの始まりは早い方がいいけど、終わりは遅い方がいいじゃないですか。早さと遅さはバランスが肝です。ビジネスの現場では誰も彼もが生き急いでいて、私は息をするのも苦しそうだなと思いながら友人の会社で煎餅食べたりしている人生です。

※私はよく友人の会社にお茶だけしに行きます。平日はずっと暇なので。

見積もりが(栗の甘露煮の汁くらい)甘い

せかせか働く友人たちをみていて思うのですが、概ね誰もが自分自身に対する見積もりがめちゃくちゃ甘いよな、と感じます。いえ、能力がないと言っているのではありません。ただ、自分が時間当たりにできることがたくさんあると思い込みすぎているよな、と思うんです。人間は毎日コンディションが違うので、本当は低調時のパフォーマンスを信じているくらいがちょうどいいのだと思います。

フリーランスのN君は大変優秀なデザイナーですが、よくよく眺めていると締め切りの前日にほぼすべての業務が行われていることにきづきます、これは明らかにマネジメントの失敗で、段階を経て業務を遂行していたら前日に徹夜までしてホームページを仕上げる必要はないのです。それならいっそ、締め切りをもっとずっと伸ばして、一、二年くらいかけて一つの仕事をやる塩梅にしたらどうでしょうか。二年くらいあれば、たとえ門外漢の私にだってホームページらしきもののひとつくらいは出来上がりそうな気がします。

そういうことを言うと、必ず「どんなに時間があっても、結局前日に一生懸命やる羽目になるんだよ」といったぼやきが聞かされますが、そうじゃないんです。違うんですよ。それは長期にわたる圧倒的な暇を享受したことのない人の話なんです。人間、目の前に太刀打ちできない暇があれば、仕事でもなんでもやってしまうんです。それでもなお暇が立ちはだかるくらいの余裕があれば、締め切りがどうなんていう問題じゃないことがわかるでしょう。

だいたい二年あっても結局締め切りの前日にアレコレやっているようなら、根本的に仕事のほうがおかしいじゃないですか。それはそうまでしてもやりたくないことだったはずで、引き受けたこと自体がそもそものミスですよ。それでもなおそうした働き方を手放せないんだとしたら、やっぱりそれは単に自分自身に対する見積もりが甘いというか、自分に期待し過ぎているというか、あくせく働く自分に酔っているだけなんじゃないでしょうか。もっと楽をしましょう楽を。

実際の見積もりで言えば、「このくらいの期間があればたとえ何か根本的なトラブルが発生したとしても確実に業務を遂行してかつレジャーに行ける」くらいの感覚で設定すべきで、そうでなければやっぱり甘いんじゃないでしょうか、プロフェッショナルとして。(きゃーこれ自分で言うのめちゃくちゃ恥ずかしいですね)

際限がない

お断り発生コマンドの話に戻ります。次にありがちなコマンドは「際限がない」です。これは端的に言うと「ぼくのかんがえたさいきょうのかめん」は世の中に存在しないよ、ということです。大部分の方は仕事上しかたなく仮面を作るハメになっているのであまりありませんが、たまたま法人をお持ちの実質的な個人のお客さんによくこのコマンド使いがいます。

頭のなかに想像されているデザインは多くの場合平面に起こした時点で全く別物になりますし、ましてそこから立体にしていく作業まで想像できているお客さんはほぼいません。だいたい最初の段階で「あなたが思い描いているものはあなたの頭の中にしかありませんよ」というお話はするのですが、それでも「自分の頭の中のイメージがしっかり伝われば理想の仮面が出来上がる」と考えてしまう方は多いです。もちろん、時間と労力をかけて何度も何度もヒアリングし、修正を加えていけば、限りなくそれに近づくことは可能ですが、はっきりいってめちゃくちゃ面倒くさいので想定の5倍くらいの予算持って出直しておいでという感じですね。

最初の段階でお断りをしておかないと永久に修正をし続けることになるのでこれは本当に注意しています。ひどいものだと、「これ以上修正できません」と何度もお伝えしているにもかかわらず「そこをなんとか。、」という電話が鳴り止まなかったことさえあります。最近はそういう気配を感じた時点ですかさずお断りします。お断りだ!!(決め台詞ふう)

現代ファッションのオートクチュールは限られた文化人にのみ許された贅沢で、お店との付き合い方のノウハウや何度も採寸をするために本店に赴く「時間」や「財力」そしてコネクションがなければ門戸さえ開かれないといいます。弊店はそんな高尚なお店ではありませんが、自分だけのために何かを作ってもらうためには、自身でも手間を惜しまない気概と、出来上がったものを受け入れる度量が必要です。もちろん、予算や納期は大切なものですが、それ以上に自分自身で最後までやり遂げる気概がなければ一つのものを作り出すことはなかなかできません。そうした情熱を本当に自分自身で持っているかどうかはお願いをする前に一度確かめてみた方がいいんじゃないでしょうか。といって、情熱だけ持ってこられても困っちゃいますけど。

明らかにやばい

コマンド云々じゃなく、明らかにやばい人もいます。むしろこちらの方が多すぎて書き切れないくらい。ほんと世の中どうなってんだ。例えば、一度お断りをしたのに別人を装って連絡してくる方、あるいは、ストーカーじみた脅迫を受けるなどしたこともあります。そういうのはもう、ほんともうあれなんで、やばいですね。こちとら大切な人生の隙間に無理やり業務をねじ込んでるんだから、仕事なんてやってる暇はそうそうないんですよ。べらんめい。

けっきょく、面白くないと

私は、見積もりというものは、工数を明示して互いの金銭的な合意を取るためのものではなく、おおむね「仕事のめんどくささ指数」だと考えています。「あなたの依頼はめんどくさいのですごく高い」もあるし、おもしろければ、無償でも持ち出しでもやります。それはもはや仕事ではないのかもしれないけど、なんならそっちの方がいいじゃないの。お金のために仕事なんてしてる暇があるなら、暇を持て余すことに情熱を捧げたほうがよっぽど素敵じゃないですか。限りある人生の時間を、有り余る暇で埋め尽くせたら。ああ人生、素晴らしきかな。

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